海洋情報部研究報告 第39号, March, 2003


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目次

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巻頭挨拶

pdf 海洋情報部研究報告の刊行に当たって
海洋情報部長 西田 英男 , p.1
Chief Hydrographer Hideo NISHIDA

原著論文

  1. abstract pdf マリアナ弧北端部の南日吉海山周辺における海底地震観測
    西澤あずさ,小野智三,笹原 昇,橋口 博,大谷康夫 , p.3
    Ocean Bottom Seismographic Observation at Minami- Hiyoshi Seamount at the Northern End of the Mariana Arc
    Azusa NISHIZAWA, Tomozo ONO, Noboru SASAHARA, Hiroshi HASHIGUCHI and Yasuo OTANI
  2. abstract pdf 重力・地磁気異常から推定される福徳岡ノ場付近の地殻構造
    小野寺健英,加藤 剛,瀬尾徳常 , p.23
    Crustal Structure in the Vicinities of Fukutoku-okanoba Submarine Volcano Estimated from Gravity and Magnetic Anomalies
    Ken-ei ONODERA, Tsuyoshi KATO, Noritsune SEO
  3. abstract pdf 有明海の潮流新旧比較観測結果について
    小田巻実,大庭幸広,柴田宣昭 , p.33
    Comparative Tidal Current Observation in Ariake Bay with the Previous Results
    Minoru ODAMAKI, Yukihiro OONIWA and Noriaki SHIBATA

総説


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Abstracts

マリアナ弧北端部の南日吉海山周辺における海底地震観測

西澤あずさ,小野智三,笹原 昇,橋口 博,大谷康夫

マリアナ弧北端部の火山フロント上の海底火山の一つである南日吉海山において,海底地震計(OBS)による自然地震観測および人工震源としてエアガンを用いた上部地殻構造探査を実施した.地殻構造探査の結果からは,南日吉海山下の地殻浅部は周辺よりもP 波の速さが大きいが,山体下深さ約6 km には低速層が存在することが推定された.また自然地震観測結果は,海山近傍に震源決定できた地震の数は少ないが,南日吉海山の山頂部では単独のOBS でのみ観測される極微小なイベントが数多く発生していたことを示した.複数のOBS で観測され震源決定することのできたイベントは,ほとんどが南日吉海山の南東約60km に存在する日光海山周辺に位置し,観測期間中では8 月5 日(世界標準時)が最も活動度が高かった.

重力・地磁気異常から推定される福徳岡ノ場付近の地殻構造

小野寺健英,加藤 剛,瀬尾徳常

火山活動の予測の基礎となるデータの整備等を目的とする「海域火山基礎情報図」作成等のため,1999 年6 月−7 月,測量船「昭洋」により実施された福徳岡ノ場周辺の,主として重力,地磁気に関する調査及び解析結果について報告する.

ブーゲー重力異常は福徳岡ノ場周辺が低重力異常域であり,二層構造解析により得られた重力基盤深度分布は,福徳岡ノ場の北約2km を中心とする半径約5km の範囲がほぼすり鉢状の形態,すなわちカルデラの形状を示す.また,地磁気異常から求めた磁化強度分布によれば,基盤の低磁化強度域が福徳岡ノ場からその北西域にかけて存在し,この区域では地下における熱消磁の影響が考えられる.一方,福徳岡ノ場については既に地震波の低速・高減衰域が地下に存在することが報告されており,これらの結果は,福徳岡ノ場の地下にマグマ等岩石の溶融体が存在する可能性を示唆する.

有明海の潮流新旧比較観測結果について

小田巻実,大庭幸広,柴田宣昭

有明海では,近年,海洋環境の悪化が懸念されていたが,平成12 年秋・冬には大規模なノリ不作が発生し,社会的な問題となった.このような海洋環境悪化に関連する現象として,潮汐振幅の減少が指摘されるとともに,潮流の減衰も懸念されるようになった(宇野木2002 ).このような状況に鑑み,海上保安庁海洋情報部では,国土総合開発事業調整費による有明海海域環境調査の一環として,平成13 年5 月に潮流の現況把握観測を行った.観測の目的は,昭和48 年8 ,9 月に行った潮流観測結果(海上保安庁水路部1974 )と比較し,潮流の変化を把握することである.そのため,測点はできるだけ前回の近傍とし,大潮・小潮の変動も考慮して15 昼夜連続観測を計12 点で実施した.その結果,潮流については,場所によって強くなっているところも弱くなっているところもあり,必ずしも減衰しているとは言えなかった.平均流については,前回,顕著であった島原半島沿いの沿岸流は,流速が約1/3 に弱くなっていた.さらに,潮流の鉛直分布について見ると,島原沖の測点では,表層で強くなっているのに10m 層はほとんど変化していないなど,特徴的な変化が認められた.また,湾央部の水温・塩分の断面観測では,新旧ともに表層に低塩水が分布していたが,今回は前回よりも高塩であった.また,湾口付近の水温・塩分分布の傾向も変化していた.塩分や水温分布は,降水量などの気象条件でも変化するため単純な比較はできないが,潮流の鉛直分布の変化や沿岸流の強弱にも影響している可能性がある.

本稿では,今回の潮流観測結果を概括するとともに,新旧比較並びにその変化の原因について考察する.

フィリピン海背弧拡大系のマントルカンラン岩

小原泰彦

フィリピン海背弧海盆拡大系のマントルカンラン岩についてのレビューを行った.現在までにカンラン岩試料が得られているフィリピン海背弧海盆拡大系は,パレスベラリフト・マリアナトラフ・セントラルベースンフォールト・西ノ島リフトである.パレスベラリフトとマリアナトラフ下のマントルプロセスには顕著な相違が存在し,それぞれパレスベラリフト型・マリアナトラフ型マントルプロセスと名付けられている.前者は,超低速拡大海嶺に期待される,拡大セグメント中央における特殊なプロセスで,基本的に肥沃なカンラン岩・含斜長石カンラン岩・ダナイトという岩相で特徴づけられる.後者は,低速拡大海嶺の海嶺軸・トランスフォーム断層会合点における一般的なプロセスで,基本的に大量に存在する組成の一様なカンラン岩(壁岩カンラン岩)・分化したガブロ質の貫入脈を持つ少量のカンラン岩という岩相で特徴付けられる.いずれにせよ,フィリピン海背弧海盆のカンラン岩は第一次近似的には,枯渇の程度が小さく,低速拡大海嶺の上部マントルカンラン岩に類似する,と結論できる.


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