海の基本図

海洋の開発,環境の保全,災害防止等に供するため,海洋の科学的基礎調査を実施して,その成果をまとめた図 。大陸棚を対象とした縮尺1/20万の大陸棚の海の基本図(海底地形図,海底地質構造図,地磁気全磁力図, 重力異常図の4図で1組)と領海12海里海域を対象と した縮尺1/1万及び1/5万の沿岸の海の基本図(海底地形図,海底地質構造図の2図で1組)がある。沿岸の海の基本図は,我が国の領海基線を明確にする基礎資料でもある。


音波探査

音波探査は,音波の物理的性質を利用して,間接的に海 底や海底下の地質構造を調査する技術で,水路測量や海底工事用の土木調査,海底資源開発のための調査等に使用する。音波探査は,探査の方式から反射法(refl ection/#method)と屈折法(refrac tion/#method)に分けることができる。 反射法とは,海底下の音響的不連続面からの反射信号を受信して,音響測深機と同じように濃淡表現で記録する調査方式である。 屈折法とは,音源と受信点の距離と音波の到達時間差から地層内の音波の伝搬速度を求めて, 地質構造を調査する方式である。屈折法は,地層内を音波が伝搬する経過時間を測定するので,音源と受信点の間がある程度離れている必要がある。このため,長大な ストリ―マケ―ブルを使用したり,海上にラジオ,ソノブイを設けて地層内での走行時間を計測する。


海域火山

海底火山及び火山島をいう。ただし、本ホームページでは、過去に火山活動による災害があったものも含めている。


海底音響画像

送受波器から細い扇形ビ―ムの音波を発射し,海底上の物体よ り反射された受信信号の強度データに、斜距離補正などを加え、モザイク画像としたもの.海底地形,水中障害物等を航空写真のように表現ができる。


海丘

比較的平坦な海洋底から孤立した地形的高まりで,山頂の広がりが小さくほぼ円錐形をなし,海洋底からの比高が1,000m以下のものをいう。比高が1,000 m以上のものは海山とよばれる。平坦な深海底にも, 比高50~1,000m(平均300m)で,径1~1 0km程度の深海海丘が発達することがある。たぶん, 火山が埋もれているものと解釈される。


海山

大洋底にあって,底面が円形または楕円形の高まりの こと。一般に周囲の海底との比高が1,000m未満の ものは海丘という。比較的急な斜面と小さな頂部を持 ち,侵食の進んでいない陸上火山と類似の地形である。 事実,海山から採集された基盤岩のほとんどが玄武岩であることを考え合わせて,そのすべてが海底火山と推定 され,ギョ―・環礁・火山島などを含めた大洋底の火山活動の一つととらえることができる。海山は一般に陸上の火山よりはるかに巨大な高まりであって,割れ目噴火によって生じたと考えられる著しく細長いものも存在す る。現在,太平洋だけで約2,000の海山が発見され ているが,今後も未測の海底から,今までと同じ割合でみつかるとすれば太平洋全体で約1万の海山があると予想される。海山は孤立する場合もあるが,多くは群をな して分布しており,孤立して一線に並ぶ海山列,麓を接 して続く海山脈,密集して群れをなす海山群などの海底 地形を形成し,さらに密集すれば海嶺となる。


ギョー(平頂海山)

頂部が一般に200mより深く,比較的平担な頂をもち,大洋底から1,000m以上突起している 海山。1946年にHess,H.H.が北西太平洋から160 個の山頂の平担な海山を発見し,19世紀の地理学者A rnold Guyotにちなんでギヨ―と命名した。 ギュヨ―,ギョ―とも書かれ,平頂海山又は卓状海山と もいう。


国際標準地球磁場(IGRF)

磁気異常は観測された磁場と標準磁場との差で定義され る。以前は研究者が標準磁場としてまちまちの値を用い ていたため,しばしば混乱することがあった。そこで1968年に IUGGの一分科であるIAGA(国際地球電磁気学・超高層物理学協会)が専門家会議を開いて ,国際的な標準磁場を用いることを申し合わせた。これをIGRFという。


コックステール

白や灰色のもくもくと上昇する噴煙の中から出てくる,岩石混じりの噴煙が描く軌跡が雄鶏の尾のように見える。


ジオイド

地球上の大洋の表面は,潮汐,波,海流,風,温度の違 いや塩分の不均一などによって凹凸を生じ,時間的にみ て一定ではない。しかし永年にわたって平均をとれば, 平均海水面の形は地球をとりまく比較的簡単な曲面をな していると考える。この曲面をジオイドと呼び,「地球 の形」であると定義する。陸地におけるジオイドは,この平均海水面を延長したものと考える。ジオイドは,地球全体からみれば回転楕円体の表面に近い曲面であるが ,地形や地質構造の地域的な違いから,多少の凹凸がある。ジオイドすなわち地球の形を測定するには,地球全面の重力をまんべんなく測定して,その重力異常から数学的に求めるのが理想であるが,重力測量は地球全面からみれば,まだほんの一部しかなされていない。一方, 人工衛星の軌道要素の変化からジオイドを測定することができ,重力測量によるほどの精度はないが,地球全体の形が解明されつつある。


磁気異常図

磁気異常の状態を図に表したもので,等値線で表現するのが普通である。全磁力(磁場の強さ)異常図がある。航空機や船舶によって測量される。


磁気異常

地磁気の分布は必ずしも一様でないので,観測された磁場と国際標準地球磁場(IGRF)とは一致せず差が生じる。これを磁気異常といい,経度・緯度が数十度程 度の広がりをもつ異常を地方的異常,もっとせまい範囲 のものを局地的異常とよぶことがある。 磁気異常を調 べることによって地質構造や鉄鉱床などの調査をすることができる。


重力異常図

重力異常の状態を図に表したもので,等値線で表現する のが普通である。フリ―エア異常図とブ―ゲ―異常図が ある。海洋情報部では大陸棚の海の基本図として重力異常図 を刊行しているが,これはフリ―エア異常図で10ミリ ガルごとの等値線で表現してある。


重力異常

実際の重力の値と,正規重力式によって得られる値との差を重力異常という。重力の観測値に高さによる補正( フリ―エア補正)をした値から正規重力を引いたものを フリ―エア異常といい,更に地形の影響を取り除く補正 (ブ―ゲ―補正)をしたものをブ―ゲ―異常という。  重力異常を調べることによってジオイドの凹凸や地質構 造などを調査することができる。


ナロービーム測深機

音響測深機は、送受波器から円錐状の指向特性をもった音響ビームを投射してその反射音が返ってくるまでの時間から水深を測定する。このため,海底が傾斜しているときは,最短距離からの反射音が記録されるので直下の水深が得られない。従って,起状の多い海底地形を忠実に表現するには,音響ビームの指向性の狭い測深機が必要であり,このような測深機をナロービーム測深機という。ナロービーム測深機は,通常,音響ビームの指向特性が全角で約5°以下のものをいい,鋭い指向特性の音響ビームを得るため,寸法の大きな送受波器が必要である。また,船体がローリングやピッチングしたとき,音響ビームが直下を保つための装置も重要な要素となる。 現在の時点で考えられているナロービーム測深機としては,次の3つの方法がある。 (1)FADS方式(finite amplitude depth sounding) 2つの異る周波数の音波を同時に海中に発射すると海水中の非直線性により差成分の周波数を得る。音響ビームの指向特性は,最初に発射した高い周波数に射する鋭い指向特性を保持しているので小型の送波器でナロービーム測深機の効果が得られる。この場合,音響ビームを直下方向に保持する方法としては,送受波器を曳航体に装備し,船尾から曳航して船体動揺の影響を除く。 (2) 水平安定台方式(mechanical stabilized transducer) 鉛直ジャイロと油圧装置により駆動される水平安定台に測深機の送受波器を取付けて船体動揺の影響を除く方式である。機械的な可動部があるためあまり大きな寸法の送受波器を取付けるには経費が大となる。 (3) クロスファンビーム方式(cross fan beam) 船底下キールに沿って配列した送波器群から波面を揃えて音波を送信すると,配列軸に直交する扇形の指向性をもった音響ビームが得られる。キールを直交する扁形の指向性をもった音響ビームが得られる。キールと直交する方向に配列したハイドロフォン群の音響ビームの受信指向特性は,キールに沿った扇形となり,直交する2つの扇形の音響ビームを組合せるとナロービームの効果が得られる。この方式の代表的なシステムとして測量船拓洋が装備したシービームシステムがある。


ナローマルチビーム測深機

ナロービーム測深機のうちクロスファンビーム方式のも のは,受信器アレイ素子の出力をdimus(digital multibeam steeringの略) 処理することにより,一つのアレイ素子から多数の音響 ビームが得られる。 ナロービーム測深機は,多数の音 響ビ―ムのうち直下方向のものだけを使用したが,ナロ ーマルチビーム測深機ではdimus処理をして得たす べての情報を用いる。すなわち,音響ビームの投射角と 斜距離から水深と横距離を求れることにより,一回の送 信ごとに十数個の水深と横距離を得る。ゼネラル イン スッルメント社(米国)では,一回の送信ごとに得られ る十数個の水深と横距離,更に,ログから得られる船速 情報を総合して船上で即座に等深線を描画するシステム を開発し,シービーム(Seabeam)の各称で商品化しているほか,浅海用として,3から610mまでの 範囲で測深できるボースン(Bosun),又は,BS 3(Bathymetric Swath Surve y System)も商品化している。測量船拓洋に装 備したナローマルチビーム測深機は,シービームである 。(マルチナロービームともいう。)

近年、浅海域、深海域ともマルチビームによる測深が行なわれるようになり、使用する測深機の表現については、「マルチビーム測深機」または「マルチビーム音響測深機」が使用されている。