貝毒について
Q: 潮干狩りの季節となりましたが、「貝毒」とは何ですか、アサリにもありますか?
A: 春になり、水も温み、これから潮干狩りの季節となりますが、気になるのが「貝」が食べられるか?「貝毒」です。
まず、貝毒ですがこれは症状により、(1)麻痺性貝毒、(2)下痢性貝毒、
(3)神経性貝毒、(4)記憶喪失性貝毒の4種類とアサリ毒が主な貝毒と思われます。
以下それぞれの特徴等を述べます。
(1) 麻酔性貝毒
中毒症状−−食後30分で口唇、舌、顔面のシビレ、手足にも広がる。軽症の場合は、 24〜48時間で回復しますが、重症の場合は、運動障害、頭痛、嘔吐、言語障害、流 涎等の症状が現れる。麻痺が進行すると呼吸困難で死亡することがある。
対 応−−治療薬なし。対症療法として、胃洗浄、人工呼吸
毒化機構−−二枚貝が有毒プランクトン(渦鞭毛藻Alexandrium属)を摂取、中腸線
に蓄積される。
毒化貝−−二枚貝のホタテガイ、ムラサキガイ、アカザラ、アサリ、ヒラオウギ、
マガキ等。
その他−−北海道で生産量の多い養殖ホタテが夏頃になると毒化して、業者を悩まし
ています。また、広島のカキも毒化し、その範囲が広がっています。
毒性分はサキシトシンであり、その毒力はフグ毒に匹敵します。
(2) 下痢性貝毒
中毒症状−−激しい下痢が主な症状で、吐き気、嘔吐、腹痛を伴うこともある。死亡
例なし。
毒化機構−−二枚貝が有毒プランクトン(渦鞭毛藻Dinophysis属)を摂取、中腸線に
蓄積される。
毒化貝−−ムラサキイガイ、ホタテガイ、コマタガイ等。
その他−−上記(1)麻酔性貝毒と同様に北海道では毎年のようにホタテガイが毒化する。
毒力はフグ毒の16分の1程度です。
(3) 神経性毒貝
中毒症状−−食後数時間して、飲み物飲んだときに口内にヒリヒリ感がある。やがて顔、
のど、身体全体に広がり、酔った状態になる。瞳孔散大、運動失調、下痢
の症状が現れる。2から3日で回復。
毒化機構−−渦鞭毛藻Gymnodinium breveの赤潮が頻繁に発生し、それによってカキ
が毒化する。
その他−−日本での発症例はなく、毒成分はブレベトキシンです。
(4) 記憶喪失性貝毒
中毒症状−−主症状は胃腸、神経症状である。
原因物質−−ドウモイ酸(脳神経系における主要な伝達物質、興奮性アミノ酸)。
その他−−日本での発症例は無いが、ドウモイ酸を産生すると言われている赤潮は見ら
れる。南西諸島や鹿児島における紅藻類のハナヤナギはドウモイ酸を持って
いる。
1987年11〜12月、カナダ東岸でムラサキガイによる中毒で、患者107名中死亡4名、
記憶喪失12名の事例がある。
(5) アサリ毒
中毒症状−−食後24〜28時間で、悪寒、食欲、不痛、倦怠感、悪心、嘔吐、便秘等
があり、皮下出血班が必ず見られる。2〜3日後に、口、歯茎、鼻等の粘膜
に出血、口臭が特徴、黄疸も見られる。重傷の場合は、神経錯乱を起こし
1週間以内に死亡する。
毒化機構−−原因は、渦鞭毛藻説や酵素説があるが不明である。中腸線に蓄積される。
毒化貝−−アサリ、カキ、カガミガイ等。
その他−−春先に特定の地域で毒化する。過去には大規模な食中毒で、185名の死亡を出
したこともある。
以上のことから、潮干狩りに行かれる方は、マスメディア等のニュースに注意するとともに、
地元漁協が管理している潮干狩り場が安全と思われます。
なお、その他の場所での貝類については、地元の人や県の水産試験場あるいは水産担当部局に
照会して下さい。