〜大陸棚の限界画定のための調査〜

目次
  1. 「大陸棚」という言葉を聞いたことがありますか?

  2. 国連海洋法条約で定められた「大陸棚」とは?

  3. 大陸棚調査とは具体的にどのようなものか?

 〜大陸棚調査の日常〜

  1. 「大陸棚」という言葉を聞いたことがありますか?

     「大陸棚」という言葉について、どのようなイメージをお持ちでしょうか。「大陸の周辺に広がる浅くて平坦な海底」などと思われる方も多いかもしれません。しかし、そのような地形的な意味ではなく、もうひとつ、管轄海域を示す法的な意味を持つ言葉であることをご存じでしょうか。
     昭和57年に海の憲法と言われる「海洋法に関する国際連合条約」(以下、「国連海洋法条約」と言います。)が採択されて、「領海」や「排他的経済水域」など、海の権利について様々なことが決められましたが、同じように「大陸棚」についても、管轄海域の一つとして定められました。
     国連海洋法条約では、基本的に沿岸から200海里までの海底等を大陸棚とすることが出来るとともに、ある条件を満たす場合は、200海里を超えて大陸棚の限界を延長させることが可能となっています。
     もしかすると、「え?大陸棚って、水深200mまでの浅い海じゃないの?」と過去に学校で教わったことを思い出す記憶力のいい方もいらっしゃるかもしれません。大陸棚を「水深200mまで」とする定義は、昭和39年に採択された「大陸棚に関する条約」で「水深が二百メートルまでであるもの又は水深がこの限度をこえているがその天然資源の開発を可能にする限度までであるものの海底」と、規定されていたことによると考えられます。国連海洋法条約が採択された今となっては、古い定義となってしまいました。


  2. 国連海洋法条約で定められた「大陸棚」とは?

     国連海洋法条約では、沿岸国の200海里までの海底等を「大陸棚」とすることができます。また、200海里を超える海域であっても、大陸斜面脚部から60海里の地点、あるいは堆積岩の厚さが大陸斜面脚部からの距離の1%となる地点まで、大陸棚の限界を延長することができると定められています。ただし、最大350海里か、2500m等深線から100海里のいずれか遠い方を超えることは認められていません。
     さらに、管轄海域として定義づけられた大陸棚では、沿岸国以外の国や機関は、大陸棚での探査及び天然資源の開発を沿岸国の許可なしに行うことが出来ないと定められています。つまり、大陸棚の天然資源について、沿岸国は主権的権利を持つことになるのです。
     それでは、条件さえ満たせば自由に沿岸国が大陸棚の限界を延長して良いというわけではありません。大陸棚を延長するためには、国連「大陸棚の限界に関する委員会」へ、大陸棚の地形・地質に関するデータ等大陸棚の限界延長に関する情報を提出して審査を受け、国連から勧告を受ける必要があります。我が国の場合は、平成21年5月までに、その情報を提出しなければなりません。
     このため、海上保安庁では、国連に提出する情報の作成に必要なデータを整備するために必要な大陸棚調査を実施しているわけです。


  3. 大陸棚調査とは具体的にどのようなものか?

     もともと海上保安庁では、国連海洋法条約が採択された直後の昭和58年から、海図を作るための測量(水路測量)の一環として、大陸棚調査を実施していました。その結果、我が国周辺海域においても、新たに我が国の大陸棚とすることができる可能性がある海域が存在することが明らかになってきました。
     そのような状況の中、実際の国連の審査の指針に関しては、平成11年に国連「大陸棚の限界に関する委員会」が「科学的・技術的ガイドライン」を制定し、我が国周辺海域のような複雑な海底地形が広がる海域に対しては、これまでの海底地形の調査に加え、地殻構造についても調査が必要とされました。その後、平成13年にロシア連邦が世界で初めて国連に大陸棚の限界延長を申請したところ、審査の結果、内容が認められないとの勧告が出されました。その理由として、国連の審査では客観的かつ科学的に極めて高度で詳細なデータが不足していたためとの情報を得て、我が国の場合もますます、精密な海底地形調査及び膨大な地殻構造探査が必要とされました。
     そこで、大陸棚調査を着実に推進するため、我が国の海洋科学及び国際法に関する有識者で構成する「大陸棚調査評価・助言会議」を設置し、国連の審査に対応することができるよう、調査内容について助言を得ました。
     また、大陸棚調査は、我が国の海洋権益に直結する問題でもあり、政府一体となって対応する必要があることから、平成16年8月に、内閣に設置された「大陸棚調査・海洋資源等に関する関係省庁連絡会議」において、「大陸棚画定に向けた基本方針」が策定されました。この基本方針に基づき、内閣官房「大陸棚調査対策室」の総合調整の下、関係省庁が連携して大陸棚調査を実施しているところです。

     それでは、直接、目では確認できない海の底はどのように調査をするのでしょうか。これには、水中を遠方まで伝わりやすい音波を利用した最新の探査技術を用いることにより調査を行います。
     海上保安庁では、大陸棚調査のうち、このような音波探査技術の経験を生かした調査を担当しています。具体的には、船底から放射状に発射され、海底で反射される音波のビームの往復時間から、海底の地形を一度に幅広く測定する「精密海底地形調査」、エアガンと呼ばれる装置により海面付近で大きな音を発生させ、海底下の地殻の境目での音の反射や伝わり方を測定することにより地殻の構造を間接的に調べる「地殻構造探査」の一部について、「拓洋」及び「昭洋」の二隻の大型測量船による調査を実施しています。



 大陸棚調査では、一度船が出港すると、約一ヶ月間は海上での生活が続きます。日常生活とはかけ離れた過酷な環境下での調査ですが、私たちの子孫に夢を残すべく、数多くの海洋調査の専門家が日夜奮闘しています。
 政府を挙げた取り組みがますます強化される中、海上保安庁においても、今後とも大陸棚調査に貢献していきます。


大陸棚調査の日常 〜約一ヶ月間続く船上における調査〜
大時化の中、大きく傾く測量船。
それでも、測量船の後方から多数の観測機器が曳航され、調査が継続されています。
地殻構造探査で必要となる屈折波受信器(海底地震計)を整備する乗組員。
繊細な整備が必要とされる観測機器ですが、高度な技術が必要なだけではなく、揺れる船上では強力な集中力が必要です。
大きな重量を持つ観測機器を釣り下げて、後方から流そうとしているところ。
揺れる船上では一瞬のミスが大けがにつながる、大変危険な作業です。

Last update: 2006.12.4