平成18年10月30日
 問い合わせ先

 海洋情報部監理課長 大門 肇
 電話 045−211−1118(内線2510)
 

東京湾の海底をのぞいてみよう
−東京湾の海底地形図(カラー陰影図と立体図)を作成しました−

第三管区海上保安本部では、管内の海図の記載情報を最新の状態に維持するために、水深や海岸線データの収集に努めています。最新の水深データを使って、東京湾の海底地形図を作成しました。海を理解するための一助として、広くご利用ください。

 1 東京湾の範囲

 一般に東京湾とは、三浦半島南端の剱埼と房総半島西端の洲埼を結ぶ線から北の海域を指します。海上交通のルールを定める海上交通安全法でも、このように東京湾が定義されています。

 他方、三浦半島の観音埼と千葉県の富津岬を結ぶ線から北の海域を、狭義の東京湾と呼ぶことがあります。観音埼と富津岬の距離がわずか7kmと狭いことと、観音埼−富津岬をはさんで南北で海底地形の特徴が大きく異なることから、このように呼ばれることがあります。

2 東京湾の海底地形

今回新たに作成した海底地形図は、平面図と鳥瞰図です。

付図1(平面図)について

付図1を見ると、船橋の南、千葉の南西、木更津の西北西、富津の北北西等に直線状の溝が延びていることに気が付きます。また、東京湾の神奈川県寄りには、凹地が大きく蛇行しながら北から南に繋がっている様子が認められます。直線状の溝は、浚渫工事によって作られた航路です。一方、蛇行する凹地は、約2万年前の氷期に、東京湾(狭義)の全域が陸であったころ、多摩川、荒川、江戸川(利根川)等が合流して太平洋に流れ下った大きな河川の痕跡です。この河川は『古東京川』と呼ばれています。

古東京川の一部は、中ノ瀬の東側を通っていました。現在の中ノ瀬航路と浦賀水道航路は、古東京川が削った凹地を利用して作られたわけです。

古東京川が神奈川県寄りを通っていたために、神奈川県寄りで東京湾の水深が深くなっています。このことは、東京湾の入り口から横浜や横須賀への船によるアプローチを容易にします。これが、幕末と同時に横浜と横須賀が港として発達を始めた地形的な要因です。

古東京川が削った凹地を除いて、東京湾の千葉県側および湾奥は、水深20m未満の海域が広がっています。東京湾はとても浅い海なのです。参考のために、東京湾を琵琶湖と比較すると次表のようになります。

東京湾(狭義)

琵琶湖

面積

922km2

670km2

平均水深

17m

41m

最大水深

70m

104m

容積

15.7km3

27.5km3

東京湾(狭義)では、面積は琵琶湖の1.5倍近くありますが、容積は琵琶湖の半分強しかありません。東京湾は、入り口が狭くて奥行きが深く、しかも浅い海ですから、東京湾の海水は外洋の水との混合が少ないことが容易に推察されます。このことは、ひとたび水が汚れると、美しさを取り戻すまでに長い時間を要することを意味し、東京湾の環境改善を難しくしている一因です。海上で活動している人々に限らず、東京湾に生活排水を流しているすべての人々による環境への配慮が、東京湾の環境保全には重要となるわけです。

付図2(鳥瞰図)について

 付図2に、東京湾を南南西の上空から鳥瞰した図と、南南東の上空から鳥瞰した図を示します。(注:鉛直方向の長さは、水平方向の長さの15倍に強調している。)

 観音崎以北は極めて浅い海である東京湾ですが、久里浜の地先から南にかけて水深が急激に深くなります。図の範囲での最深部は650mです。比高数百メートルの巨大な谷地形が見て取れるわけですが、この海底谷(東京海底谷)は、東京湾を出た後東に伸びて相模トラフと呼ばれる海溝に合流しています。