L操船の障害など
浅瀬の固有名の分類ほまだまだつきないが、最後に航海上(操船上)重要な浅瀬名について述べたい。危険物である浅瀬を示す名称としては、触礁を意味する「かじかけ」がある。
内海では下記のようなものがある。
「梶掛」(新居浜港 海図第一一二〇号)
「梶掛ノ瀬」(早崎瀬戸 海図第一二五号)
「カジカケ」(白石島 海図第一三七号B)
「梶掛石」(三津口湾 海図第一四一号)
ほとんどの礁の水深は一〜二メートルで、きわめて危険なものであるが、沖家室島にあるものは水深五メートルでかなりの大型船を意識したものである。
なお「かじかけ」の付く浅瀬ほ全国的に分布し、海図に記載されているものだけでも三〇個以上もあり、表記の仕方もさらにつぎのようなものがある。
揖懸、梶懸、舵掛、梶缺、舵カキ、カジカキ。また、北海道有珠湾にあるチーボッケショマ (海図第一九号参照)もアイヌ語の同じような意味で、古来接触した船が多かったという。
もう一つの地名「かんどり」について述べよう。梶取埼あるいは梶取岬の地名は各地にあり、その岬を通過して針路を変える場所であるという。瀬戸内海にも来島海峡の西口に梶取鼻があり、東口の地蔵埼もかつては梶取埼といった。
浅瀬名にも同じ目的に使用しているかどうか不明であるが「かんどり」のつくつぎのような地名があって、紀伊水道に集中しているのが興味深い。
「梶取根」(和歌山下津港 海図第一一四四号)
「梶取礁」(日ノ御埼 海図第九七号)
「梶取碆」(橘浦 海図第一一〇四号)
「梶取」(富岡港 海図第一一四七号)
「沖ノ梶取」(富岡港 海図第一一四七号)
あとがき
以上海図に記載されている瀬戸内海の浅瀬名について、ごく大ざっばに述べたが、前に書いたようにこれら以外に海図には載っていない多くの浅瀬名があることは明らかである。
一つ一つの岩礁名を見ると語源のはっきりしないものが実に多い。それらはすでに使用されなくなった言葉とか地名その他に由来しているはずである。おいおい調査して見たいと考えている。いろいろ御教示願えれば幸いである。
(水路図誌複製「海上保安庁承認第五九〇六一七号」)
責任者 注:
以上は、地名研究協議会「地名研究年報」第1号(昭和59年5月25日発行)に投稿された海上保安庁OBの跡部 治氏に了解を得て掲載いたしました。また特殊な漢字が含まれていたため、その部分を”=”で表し、段落の終わりに漢字の説明を付記しました。