国産測地衛星「あじさい」等の人工衛星レーザー測距観測注1

から父島が年間6.6cmの速さで移動していることが判明

 

 海上保安庁では、領海等我が国の管轄海域の確定と、海洋における測位精度の向上を目的として、第五管区海上保安本部下里水路観測所を基準として我が国の領海や排他的経済水域の要となる島嶼等の正確な位置をレーザー測距観測等によって決定しています。昨年度からは、これらの基準点のうち日本国土の外縁部で、かつ異なるプレート注2上に位置する「父島」、「石垣島」、「南鳥島」、「稚内」において、毎年一ヶ所ずつ4年周期で、各基準点の位置を精密に決定しプレートの動きをモニターする海洋測地基準点観測を開始しました。

 父島では、平成8年9月から12月にかけて、国産測地衛星「あじさい」、米国測地衛星「ラジオス」等を用いた海洋測地基準点観測が行われました。この観測データと昭和63年1月から3月にかけて行われたレーザー測距観測の観測データを解析し、下里−父島間の相対位置関係をそれぞれ精密に求め、両者の差をとると、父島の動きが決定できます。別途求められている下里の動き注3を考慮すると、父島は下里が位置するユーラシアプレートに対して年間6.6cmの速さで西北西の方向(北から時計回りに291度の方向)に動いていることがわかりました。これは、父島がフィリピン海プレート上に固定されているとすると、理論的な予測注4と良く一致しており、フィリピン海プレートの動きの理論的予測値が最近8年間の同プレートの動きと調和していることを示しています。

 フィリピン海プレートは南海トラフなどでユーラシアプレートとぶつかり、そのエネルギーが海溝型地震注5によって解放されることが知られており、今回の成果は、将来駿河トラフ、南海トラフ等で起こる海溝型地震発生のメカニズムを理解する上で貴重な資料となります。

 

 

注1:人工衛星レーザー測距観測

 地上からレーザー光線を衛星に向けて発射し、衛星に取り付けられているプリズムで反射した光を地上の同じ地点で受け、往復時間を測定することにより距離を測る観測のことで、地上の観測点の位置が正確に決定できます(写真参照)。日本が1986年にH-Iロケットで打ち上げた「あじさい」(図2参照)、1976年にアメリカが打ち上げた「ラジオス」など、レーザー測距専用の衛星が使われます。

 

注2:プレート

 地球はプレートといういくつかの殻で覆われています。これらのプレートは、お互いに違う方向に動いており、この動きの違いが地震・火山の原因となっています。

 日本周辺では、ユーラシアプレート、フィリピン海プレート、太平洋プレート、北米プレートがぶつかっており(図3参照)、南海トラフ、日本海溝などではプレートが相対するプレートの下に潜り込んでいることが知られています。

 

注3:下里の動き

 第五管区海上保安本部下里水路観測所では、昭和57年から固定式レーザー測距装置により、測地衛星のレーザー測距観測を行っています。下里の観測データを世界中に分布しているレーザー測距観測局のデータと解析したところ、下里はユーラシアプレートに対して年間3.2cmの速さで西北西に動いていることがわかりました(平成8年7月広報)。

 

注4:フィリピン海プレートの理論的予測値

 プレート運動の理論は、地震のメカニズムや地質学的証拠を蓄積させることによって作られます。フィリピン海プレートの動きは、地震のすべり量から求められた瀬野理論が知られています。

 

注5:海溝型地震

 プレートが海溝で沈み込むときに、陸地側のプレートの端を引きずり込みます。しばらくひきずられ続けた後、やがて反発力によって陸地側のプレートが跳ね返ります。これが海溝型地震で、数十年から百数十年の間隔で起こると言われています(図4参照)

 

図1.父島の動き

図2.あじさい

図3.プレート

図4.地震の発生

固定式レーザー
固定式レーザー測距装置(下里)
可搬式レーザー
可搬式レーザー測距装置(移動観測点)


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