観測の内容について
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【人工衛星レーザー測距観測の原理】
 下里水路観測所で行っている人工衛星レーザー測距観測(SLR観測)の原理は大変簡単です。
 まず、観測の対象となる人工衛星は、その本体にコーナーキューブと呼ばれる特殊な鏡がいくつも取り付けられています。このコーナーキューブは、光をそのやってきた方向に反射する性質が有り、コーナーキューブを取り付けた人工衛星に光を当てるとその光は人工衛星のコーナーキューブで反射してその光を発した場所に戻ってきます。
衛星へのレーザー照射もちろん光は数百km〜数万kmもの長い距離を往復するわけですから、強力でかつ平行光線に近い光が望ましく、そうした特性を備えたレーザー光が人工衛星に向けられる光として使用されます。
 人工衛星へ光を発射し、衛星で反射された光を受けることが出来て、その往復に要した時間が計れれば光の真空中での速度(299792458m/s)は一定ですから、人工衛星までの距離が測定できるわけです(実際の観測では、大気の影響による光の速度の変化の問題がありますので、気温・気圧・湿度などをもとにしたモデルから計算した補正値や、何らかの方法で実測した補正値を観測値に加えて補正を行っています)。
軌道決定1 (1) ある衛星が観測局から観測可能な地点を通過したとき、それぞれの観測局は人工衛星までの距離を測定します(普通、数分から1時間程度の間に、数千〜数十万回の測定を行います)。こうして一連の距離のデータが得られると、その衛星の軌道を計算することが出来ます。左の図では、ロシア、日本、オーストラリアの3つの局で観測された3つの軌道が計算されることになります。
軌道決定2 (2) (1)では3つの局で3つの軌道が計算上出来てしまいましたが、本当の軌道は1つですから、こうした複数の計算結果を持ち寄って、より確からしい軌道を決定します。世界各国の観測局のデータを持ち寄ることで、人工衛星の軌道は現在では 1mm以下といった精密さで決めることが出来るようになってきました。こうなれば、人工衛星がどの瞬間にどこにあったかがわかるのでこれを「空飛ぶ三角点」として使うことが出来るようになります。

 SLR観測では、このように人工衛星を空飛ぶ三角点とすることで、数千kmも離れた地点の位置関係を求めることが出来るのです。
 ここまでの説明で、既にお気づきの方もいらっしゃると思いますが、SLR観測においては、いくら一つの局だけが頑張ってもよい結果は得られません。観測局の一つ一つが、互いに協力し、データを持ち寄ることによって、初めてよい結果が得られる観測だといえます。

 現在は、ILRS(International Laser Ranging Service)という国際機関が中心となって、国際共同観測を行っています。
 最後に、各国のSLR観測局の位置を示した図を掲示します。

世界の人工衛星SLR観測局
世界の観測局