自律型海洋観測装置(AOV)による海洋観測


海上保安庁の海洋観測

 海上保安庁では、航行船舶の安全の確保や海難事故発生時における円滑な捜索救助活動の実施などを目的として 測量船・巡視船によって、海の流れの方向と強さをはじめ、海水温や塩分濃度を測定する海洋観測を実施しています。
 これらの観測成果は他機関等の観測成果とあわせ、解析され海上保安庁海洋情報部発行の 「海洋速報」や 管区海上保安本部発行の「管区海洋速報」(沖縄周辺海域は「第十一管区海洋速報」 )により、ひろく公開され、利用されています。


自律型海洋観測装置(AOV)について

 自律型海洋装置(AOV : Autonomous Ocean Vehicle)は、指令に従って海面上を自律的に航行する「ロボット」です。
 「ロボット」と言っても人の形をしているわけではありません。海面に浮かんだサーフボードのような部分(海面フロート)と、 海面下に吊り下げられた多数の羽で構成される部分(水中グライダー)から構成されます(右図参照)。

 AOVは陸上からの指示に従って海上の任意の位置に移動することや、一定の範囲にとどまっていることも可能です。 つまり、海の上の「ドローン」です。
 AOVの動力は、「海の波」です。波浪により海面フロートが上下動すると水中グライダーも上下に運動します。このとき 水中グライダーの羽が水を切ることで推進力が発生し、海面フロートを進行させることができます。
 また、海面フロートの表面には太陽電池パネルがはめ込まれており、AOVに搭載された制御用の通信装置や観測機器の運用に 必要な電力を供給します。

 測量船をはじめとした船舶による海洋観測では、人が乗船し操船や観測機器の操作を行う必要があることから、 荒天下や長期間にわたる連続的な海洋観測の実施は非常に困難となっています。したがって、船舶による海洋観測では 広大な海洋における、ある限られた時点においての「点」や「線」としての情報を得られているというのが現状です。
 しかし、AOVを用いることにより、長期間にわたる連続した海洋観測を天候に関わらず実施することが可能となります。