伊勢湾北部地方の昔からの言い伝え

(1) 風、雲に関係するもの

@ 鈴鹿の山の雲が切り上がって来ると落風が吹き西風が強く遭難のおそれあり   (富田・弥富)
    - 3月から4月のことである。

A 東風強い 漁船要注意   (富田)
 
B 十月の雲有り凪   (若松)
    - 旧暦の10月は雲の流れから見ると西風が吹くと思われるが、この時期は風は吹かない。
     「十月の小六月」ともいう。

C 多雲出しに風吹かず   (磯津)
    - 西の山にかかった多量の雲が一同に東へ流れる状態になっても、たいして風は吹かない。
     冬季のことである。

D 多度山〔三重県桑名郡多度町 標高 403m〕方向に雲が早くのぼると荒天になる   (富田)
    
(2) 雨に関係するもの

@ 春の地乾き   (若松)
    - 前夜からの雨が夜明けに止み、日の出とともに地面が乾き始めるころ強い西風が吹く。

A 龍泉寺〔名古屋市守山区 の方より来る夕立は鍋釜がわれる   (弥富)
    - 北東の方向からの夕立は大雨である。
 
(3) 朝焼け、夕焼けなどに関係するもの

@ 月に雨なし日に日照りなし 天気ヨーロッパ 雨はフランス   (磯津)
    - 月に暈(笠)があっても雨にならないが、太陽が暈をかぶると雨が降りやすくなる(日照りにならない)

(4) 台風に関係するもの

@ 長施(ナガセ)日和   (若松)
    - 夏から秋にかけて、強い南風または東風が連日吹き込む日がある。また、6月中旬ごろから
     吹き出すのを「祇園長施」、土曜に入ってからのを「土用長施」、盆の時期のを「盆長施と呼び
     二週間程度続く。

A 南東向き〔伊勢湾口の方向 に立雲ができると台風が来る   (富田)

(5) 雪に関係するもの

@ 南西の風が吹くと翌日は雪が降る   (弥富)

A 雪が北から南に降る様になると春が近い   (富田)

(6) 食物に関係するもの

@ 霞とぼた餅 四つまで   (磯津)
    - ぼた餅はとても美味であるが、食するには精々4個までであるように、朝の霞は四つ時
     〔午前10時〕ごろ晴れてくる。

(7) その他

@ 遠くの鐘や汽車の音がよく聞こえるときは雨が近い   (磯津)

A 飛行機雲が消えずにしばらく残るときは下り坂   (磯津)

伊勢湾北部の風の呼称

北東…たてやま、べっとう   東…こち   南東…いなさ   南…まぜ
南西…やまぜ   西…まにし   北西…なかにし