伊勢湾南部地方の昔からの言い伝え

(1) 風、雲に関係するもの

@ 堀坂に雲がかかれば風になる   (東豊浜・下御糸)
    - 2月から3月にかけて、堀坂山(松坂市西部、標高757m)の方向に雲がかかると急に西風が吹く。

A 二八風(ニッパチカゼ)より三九が恐い   (村松)
    - 2月、8月の風より3月、9月の北からの突風が恐い。
 
B ダシコ   (村松)
    - 春季、明け方に陸から吹く南西の風のことで、この日は凪である。

C 八十八夜のばんの風 要注意   (香良洲)
    - 八十八夜前後に吹く西からの突風のことである。三河地方でも言われている。

D 時夜(ジヤ)*の風が吹くと天気が続く   (東豊浜)
    - 4月から5月にかけて、午後2時ごろ東風が吹き、4時ごろ南の風に変わると、夕方6時頃は凪になる。
   *時夜…鶏が夜の時刻を告げること。
    
E 春から夏にかけて朝から東風 昼から南西風が吹くと好天が続く   (神明)

F 坂東疾風(バンドバヤテ)に伊勢日照(イセヒデリ)   (村松)
    - 7月から9月ごろ、積乱雲が渥美半島を覆うと伊勢地方は蒸し暑い日が続く。
 
G 朝熊ヶ岳に雲が出ると西風が吹く   (松下・村松)
    - 9月から12月頃までのことである。

H 宵凪 明日の風   (村松)
    - 8月から3月ごろ、宵に凪になっても明日はまた風が吹く日である。

I ときお   (村松)
    - 7月から9月ごろ、午後から吹く東風のことで、これが吹くと明日は凪である。
    
J 西むかい   (村松)
    - 9月から11月ごろ、凪の午後突然、南東の風が吹き、次第に西風に変わることである。

K 朝 凪であっても鈴鹿の山の上に綿雲がかかっていると必ず北西風が吹いてくる   (東大淀)
    - 2月、8月の風より3月9月の北からの突風が恐い。
 
L はくそ   (村松)
    - 9月から10月ごろ、白山〔石川・福井・岐阜各県にまたがる火山体で最高は御前峰(ゴゼンミネ)2,702m〕
     に雲がかかると風が吹くことである。

M した雲(あるいは、若雲)   (村松)
    - 3月から11月ごろ、東の水平線から湧き出るようにできる雲のことで、明日は東風が吹くか雨が降る前兆である

N 下場(シタバ)がすくと明日は凪   (東豊浜)
    - 伊勢市の海岸から東方の伊勢湾口一帯に雲がなくなると明日は凪である。
    
O 秋のひつじは南西(ヤマゼ)よりこわい   (香良洲)
    - 南西から北東へ雲が移動する時は急に西風が強く吹くから注意しなければならない。

P 冬 南の方全体に雲がある間は強い西風は吹かない   (村松)
 
Q 冬 南風が吹き西の山に雲が浮かんだ時は要注意   (松阪)
    - 春季、明け方に陸から吹く南西の風のことで、この日は凪である。

R 向地がよく見えると凪が近い   (松下)
  
(2) 雨に関係するもの

@ 土用前の疾風は雨 土用に入ってからの疾風は風が入るから要注意   (今一色)

A 朝から疾風は日くずれのもと   (今一色)
    - 夏、午後からの降雨〔夕立〕は一時的なものであるが、
     降雨が段々、早い時間帯に起こるようになると天気がくずれてくる。

B 夏の西風 雨の肥(コエ)   (今一色)
    - 夏、西風が吹くと翌日は雨が降る
 

(3) 台風に関係するもの

@ ふりこみあるいは しこみ)   (村松)
    - 台風の時期、外海からの高波で明日の天候を予想すること。

A うら風   (今一色)
    - そよ風が吹いている時、反対方向の風が吹き出したら、大風の前兆である。

(4) 雪に関係するもの

@ 朝熊ヶ岳に雪がかかると春が近い   (鹿海)

(5) 波に関係するもの

@ 北波がころける   (村松)
    - 冬の夜間、北波がなぎさにうち寄せると明日は凪である。

A 上手が黒くなったら気を付けよ 白くなったら逃げよ   (今一色)
    - 水平線の海の色が黒く見えたり、白波が立ち始めたら注意しなければならない。上手とは西の方向。

B 国崎鳥羽市 鎧埼付近方面の波音が聞こえると天気が回復する   (神明)
 
(6) その他

@ 電車の音が良く聞こえたら雨が近い   (神明
 

☆ 怒合(ドアイ)
    - 伊良湖岬と神島との間にある「伊良湖水道」のことである。
     また、神島と石鏡との間の水道を「中度合」という。    (若松)