愛知・三重両県の沿岸部全域にわたる昔からの言い伝え

(1) 風、雲に関係するもの

@ 朝西風(ダシ) 昼東風(コチ) 夕南風(マゼ)   (的矢)
 日和南風   (師崎)
    - 春の回り日和のことである。

A 春風の一重吹き   (若松・師崎)
 春の一夜吹き   (二木島)
    - 2月末から3月初めにかけて、雨が朝方止んだ当日は強い西風が吹くが翌日は凪いで好天となる。

B 春は霞で風が吹く   (若松・名田)
 春霞 鬼の金玉吹き破る   (一色・竹島)
 春霞 油断するな   (千賀)
    - 朝方は凪で好天であっても、霞が深い日は午前10時ごろ、急に黄砂混じりの強い西風が吹く。

C 春南 秋北   (川越・村松・答志・渡鹿野・千賀・名田・大王船越・迫間浦)
 秋北 春山*で   (吉田)   山*…吉田から見て南の宇治山田方面
    - 春は南方の空が曇っていると天気が悪く、秋は北方の空が晴れていると好天となる

D 朝南風(マゼ)が吹いたら沖へ出すな   (菅島)
 朝南風 油断するな   (坂手・錦・田原)
 南西(ヤマゼ)返しの西こわい   (一色・篠島・答志・名田・東豊浜・引本・二木島・贄浦・
                        大王船越・田曽浦・島勝・的矢・渡鹿野・千賀)
    - 春から秋にかけて、温かい南風が吹いている時、風が西の方向へ変わると
     急に突風が吹き出すことがある。この時期は特に海難が多い。
     台風の時、西の方へ変わる風のことをいうこともある。

E 西にカブ立てば落風が吹く   (菅島)
 カブ虹が立つ   (南知多町・村松)
    - 西の方に虹ができるとち突風が吹く。春、秋に多い。

F 二八月は可愛い子を船に乗すな   (若松・川越・田原市渥美町)
 二八月の手の平返し   (須賀利)
 二八は天気に気を付けよ   (東豊浜)
    - 旧暦2月は朝凪であっても午後から黄砂混じりの強い西風が吹き出すことがある。
      また、8月は台風時期で危険である。

G 大雲に風なし   (香良洲・千賀・渡鹿野)
 大雲が立つと風が吹かない   (贄浦・奈屋浦)
    - 秋から冬にかけて、雲があたり一面にどんよりしている時は風が吹かない。

H 師走の盲東風(メクラコチ)   (東豊浜)
 十月の盲東風   (竹島)
    - 12月から1月にかけて、東の風が吹き雨が強く降る日は、急に突風が吹き出し、
        大波で視界が悪くなり大時化となる。

I 夜凪 長風   (若松・篠島・南知多町・師崎)
    - 冬季、日中は強い西風が吹くが夜になると風が弱くなる日が続く
    
(2) 雨に関係するもの

@ 節(セツ)の西風 雨のおばさん   (川越・磯津)
 節の西風 その日の雨   (桑名市長島町)
    - 梅雨期(俗に節という)に西風が吹くのは雨の兆候である。

A ぼろで風   (香良洲・千賀)
    - 11月ごろ、ぼろ〔時雨〕が降ると必ず西風が吹く。

B 朝虹はその日の洪水の知らせ   (伊良湖)
 朝虹に川越するな   (甲賀・南知多町・道瀬)
 朝虹は雨 夕虹は晴   (渡鹿野)
    - 6月から7月にかけてのことである。

C 宵の時雨 明日の凪   (東豊浜)
〃 夜の黒雲 明日は凪となる   (錦)
    - 11月から12月にかけて、日の入りのころ雨がパラパラ降ることがあるが、翌日は凪である。

D 山が近い 雨だ   (答志)
 富士山が見えたら天気が落ちる   (志島)
 山や島が近くに見えるとき雨   (師崎)
 御岳山がよく見えると二、三日後に雨が降る   (旧木曽岬村・弥富)
 御岳山・伊吹山・富士山がよく見えるときは 風が吹いても凪となり雨が近くなる   (東幡豆)
    - 冬季のことである。下御系、香良洲及び豊岡地区でも同様に言われている。

(3) 朝焼け、夕焼けなどに関係するもの

@ ついりの夕焼け 蓑着て待て   (若松)
 春の夕焼け 蓑着て待て   (師崎・篠島)
    - 春から梅雨期にかけて、夕方雨が上がり夕焼け空となっても、翌日もやはり雨が降る。

A 夕焼けの翌日は晴天   (早田・東幡豆・竹島)
 秋の夕焼け 鎌研いで待て   (若松・大曽根・菅島・贄浦・迫間浦・神島・答志・渡鹿野・篠島・師崎)

B 高日(タカヒ)の入(イ)りは雨になる   (三谷)
 夕日の高入りは雨が近い   (菅島)
    - 春季、水蒸気が立ちこめたような雲の中へ日が入る時は雨が近い。

C 朝焼けは三日ともたぬ   (渡鹿野)
 朝焼けと女の腕まくり   (坂崎)
 朝焼けは雨となる   (東幡豆・竹島・三谷・田原市渥美町・南知多町・大曽根・早田・飯浜)
    - 朝焼けの日は天気があてにならない。

D 月に雨傘 日に日傘   (畔蛸・迫間浦・渡鹿野・南知多町・師崎)
 日傘、月傘 雨になる   (須賀利・早田)
    - 全国的に言われていることである。

E 星が光れば沖は風   (三谷)
 星の光る夜 明日嵐   (篠島)
 夜空の星がまたたく時 翌日は晴天だが風が強い   (磯津・大曽根・迫間浦・神前浦・田原市渥美町・三木浦)
    - 秋から初春にかけてのことである。

F 朝日に小日(コヒ)*はその日降水   (若松・東幡豆・南知多町・師崎)
 旭日にコーヒ*はその日雨・風   (磯津・贄浦)
 朝日に小日はその日風 夕日に小日は些日(サニチ)*の雨   (御座・畔蛸)
 朝日に紅日*はその日の寄風* 入り日に紅日は三日の雨   (田曽浦)
 夕日に小日は三日(サンジツ)の嵐   (若松・渡鹿野)
    - 朝焼けで小日がある時は天気がかわりやすく、その日のうちに雨が降ったり風が吹いたりする。
   *小日、コーヒ、紅日…雲の間に太陽の光が筋状になること。鳥羽市坂手地方では「朝コシ」、「夕コシ」といい、
                幡豆郡一色地方では「好日(コウジツ)」といわれている。
   *些日…近日中
   *寄風…東の風
  
(4) 台風に関係するもの

@ 七月から十月ごろ、伊勢湾口に入道雲がわき上がり、それに横筋が入る時は台風の前兆である
     (松阪・神島)

(5) 潮汐に関係するもの

@ そこり潮 さいから雨   (師崎)
 そこりに風は強くなる   (渡鹿野)
    - 春から秋にかけて、干潮時から潮が満ち始める時、雨が降り出したり南東の風が吹いたりする。例えば、
       明日の天気予報が雨であっても干潮時までは降らないでそれ以降、降り出したり風が吹き出したりする。