平成12年12月25日
第五管区海上保安本部
7月に続き皆既月食の現象
1月10日の未明、月が地球の影に完全に隠される皆既月食(かいきげっしょく)という天文現象が起こります。
月食の皆既食の始まりは午前4時50分ごろで、皆既食の終わりは午前5時52分ごろですので、1時間ぐらいの間、幻想的な赤銅色の満月を見ることができます。
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10日未明の月の状況は、別紙のとおりです。
【皆既月食の概念図】
【月食はなぜ起こるの?】
太陽と地球と月が上の図のような配置になるときに満月になりますが、月が地球を回る平面と地球が太陽を回る平面とが約5度傾むいているために、月食になることは希で、上の図のように、たまたま三つの天体の中心が一直線上に位置する時に月が地球の影に入る月食の現象が起こるわけです。
【月食中はなぜ赤銅色の月になるの?】
皆既月食中、月は地球の影に隠れて見えなくなるはずですが、実際の月食では赤銅色の月が見えます。この理由は、地球に大気があるためで、太陽光が地球の大気に屈折して、地球の影の部分に回り込むことがその原因です。まるで、地球の大気が凸レンズのような働きをして月を照らすわけです。このとき、月が赤く見えるのは、太陽の光のうち、紫色や、青色といった光は地球の大気によって吸収、散乱されて弱まりほとんど届かないため、地球大気による吸収の少ない赤色光のみが月に届くためです。これは、夕日が赤く見えるのと同じ現象です。
【1月9日最北に位置する月】
月が地球を回る平面と地球が太陽を回る平面とが約5度傾むいていることにより、1月9日の月は軌道の北の頂点(最北)に位置しますので、今回の皆既月食前の夜半には、神戸では月の高度は水平線から77°を超えます。
【1月10日近地点に位置する月】
月の軌道は、地球を中心とする楕円軌道です。1月10日の月は地球の中心からの距離が最も近い位置(近地点)となり、最も大きい満月が7月の現象より明るい赤銅色に輝きます。
【次の月食の現象はいつ起こるの?】
次に日本各地で月食が見られるのは、半年後の7月5日の深夜ですが、月の半分程度が欠ける部分月食で、今回のような皆既月食は平成16年(2004年)5月5日の未明まで見ることはできません。
【海上保安庁がなぜ月食の予報ができるの?】
海上保安庁では、船舶などが天体を観測して地球上の位置を知る天文航法に必要な「天測暦」を刊行しており、この「天測暦」は、やはり当庁が計算・刊行している天体位置を計算した「天体位置表」を基に作成しています。
天体位置表には、毎日の太陽・月・惑星及び恒星の位置のほか、日食・月食などの天文現象の予報が掲載されています。
このように、海上保安庁では、航海に必要な天体の位置計算業務を行っており、月食の情報も提供できるわけです。
別紙
平成13年1月10日 皆既月食 神戸における状況図