Q:鳴門海峡の潮の流れはなぜ速いのですか?

鳴門海峡は,世界三大潮流の1つに数えられていますが,なぜそのような早い 流れが起きるのでしょうか.

A:

図1:鳴門海峡周辺

鳴門海峡の流れ(潮流)は,1日に2回の北流と南流があり,最強流速は北流で10.5ノット(約19.4km/時), 南流で9.9ノット(約18.3km/時)に達します. タンカーやコンテナ船の船速が15から24ノット(約27.8から44.4km/時)ですから,相当な速さで流れてい ることが分かるかと思います.

それでは,何故このような早い流れが生ずるのでしょうか. それは,規則的に繰り返される潮の干満である潮汐によるためです.


図2:瀬戸内海東部海域への潮汐の動き

潮汐は,起潮力(公転している地球上の各点に対して月や太陽の引力が場所によって異なっているこ とから生ずる力)によって生じます. 瀬戸内海の海水に働く起潮力は,太平洋などの外洋と比べると遥かに小さく直接作用し引き起こされ る潮汐は殆ど無視することできるため,外海の潮汐波(潮浪)が紀伊水道や豊後水道等から入り込む ことにより潮汐が生じます.

図2は,瀬戸内海東部のある年の潮汐の動きを表したものです(濃赤色が潮の高い状態を,淡赤色 が潮の低い状態を表しています).

紀伊水道から進行し播磨灘へ向かう潮汐波のうちの1つは,友ケ島水道,大阪湾,明石海峡を通り進ん で行きます.この潮汐波は進行が徐々に遅れて行き,明石海峡を抜けるのには4時間ほどかかります. もう1つは鳴門海峡を通り播磨灘へ向かう潮汐波があります. しかし,この潮汐波は鳴門海峡が非常に狭いため中々通り抜け進行することが出来ません. そうして播磨灘へ達した潮汐波が播磨灘で高潮となる頃,鳴門海峡の南側では低潮となります.


図3:福良‐阿那賀浦の潮汐曲線

図3は淡路島南部の鳴門海峡を挟んだ南側の福良と北側の阿那賀浦における潮汐曲線です. 平均高潮間隔(月が子午線上を通過してから高潮になるまでの平均的な時間)は 福良で6時間32分,阿那賀浦で11時間45分でその差(潮時差)は5時間13分となっています. 月は地球の周りを約24時間50分かけて周っていて海面はこの動きに合わせて,凡そ12時間25 分で高潮から高潮(低潮から低潮)へ動いており,福良と阿那賀浦の潮時差5時間13分は, ちょうど位相が逆転している状態にあることを示しています (ほぼ福良で高潮時には阿那賀浦で低潮に,福良で低潮時には阿那賀浦で高潮になる).

高潮は潮汐により海面が最高になった状態,低潮は潮汐により海面が最低になった状態です から,ここに海面の勾配が生ずることになります. 水は平衡状態を保とうとするので,高い処(高潮)から低い処(低潮)へ向かい移動するこ とにより流れ(潮流)が発生します.

高潮から低潮へ向かう流れが鳴門海峡を通過しようとするのですが,鳴門海峡は幅が約1.3㎞ と非常に狭くなっています. これはちょうど,バケツの側面に穴を開け,そこから水が噴き出る状態と同じ状況になります.

つまり,鳴門海峡の北側で高潮の時に南側では低潮,あるいは北側で低潮の時に南側では高潮 となり,ちょうどシーソーの動きをするような海面になり海水に動きが生じます. そこに海に比べ海峡の幅が非常に狭くなるために,激烈な潮流がジェットのように噴出する 早い流れができます. これが鳴門海峡の潮流です.

濃赤色が潮の高い状態を,淡赤色が潮の低い状態を表す.


瀬戸内海の潮流推算

瀬戸内海の潮流推算(ベクトルマップ)は,海しる(海洋状況表示システム)にて見ることが出来ます.

参考文献

  • 道田 豊,小田巻 実ほか、『海のなんでも小辞典』、講談社,2008年
  • 中野 猿人、『海峡や水道における流動その他の現象』、沿岸海洋研究ノート第6巻第2号,1968年
  • 海上保安庁、『書誌第103号 瀬戸内海水路誌』、日本水路協会、2018年