平成10年度寺島水道潮流観測報告
(第七管区海上保安本部、平成11年2月)


1 まえがき


 寺島水道は、西彼杵半島西岸〜端ノ島・寺島間にある水道で、 最狭部の寺島東端赤埼と対岸にある呼子ノ鼻との間が最も狭く約830mとなっている。 水道内は小型船の通航が多いが、最狭部付近には、現在橋を建設中であり、 橋脚の分可航幅がさらに狭なっている。
 今回、航行船舶の安全及び海難救助のための基礎資料の充実をはかるため、 航路測量に併せ潮流観測を実施したので報告する。

2 観測の概要
(1)観測期間
    平成10年9月9日〜9月18日(10日間)


(2)観測海域及び概要
 左測点図の測点490808(位置:33゚01'30"N 129゚38'42"E)に、 海面からの吊り下げ方式により流速計(協和商工製MTC-V)を設置し、 測定間隔20分で海面下5mの8昼夜連続観測を実施した。
当初、15昼夜連続観測を計画していたが、台風接近に伴い、観測をうち切った。


(3)観測班等
現地作業
 第七管区海上保安本部
  水路部水路課  鈴木和則、蒲池信弘
  測量船はやとも 早瀬謙太郎、徳野 博、森 里幸
資料整理
第七管区海上保安本部
 水路部水路課  鈴木和則、蒲池信弘

3 観測結果
(1)時系列変化(付図1)
イ 流速ベクトル、北方・東方成分
 1日に2回北流、南流を繰り返す流れを示し、流速は大潮期に強く、小潮期に弱い。また、北流よりも南流が強い傾向にある。
ロ 25時間移動平均
 南流で0.1〜0.3ノットを示し、比較的安定した流れを示している。
ハ 水温
 観測期間中の水温は、24〜25.5℃で、北寄りの風が強く吹き始めた15日頃から約1℃降温したが、全般的に規則的な周期変化は見られない。
ニ 風データ
 佐世保海上保安部での風の毎時観測データを、風向を反転させて図化した。観測期間中、ほとんどが北寄りの風であったが、特に潮流との相関は認められない。
(2)流向・流速別頻度統計
 図に示すとおり、流向頻度分布では、北北東〜北及び南南西〜南方向に約91%の出現割合を示している。
 流速頻度分布は、1ノット前後の流れが最も多くなっている。
(3)潮流調和分解
調和定数(表1)
 平成10年9月9日から9月18日の間の観測値より、8昼夜調和分解を行った。
 主要4分潮の和は2.9ノットで、潮型は混合潮型を示し、平均高潮間隔は7.3時間であった。
恒流
 恒流には、気象・海象等の影響による流れが含まれており、これら条件の変動により変化するものであるが、観測期間中の海面下5m付近の平均的な流れを恒流として下図に示した。
最大流速
 予想される海面下5m付近の上げ潮流及び下げ潮流の最大流速を下図に示した。
測点490808では、上げ潮流は北北東方向、下げ潮流は南南西方向に流れ、流速はそれぞれ2.3ノット、3.2ノットであった。
大潮期の平均流況
 佐世保港の潮汐高潮時から1時間ごとの大潮期(春秋の朔望期)の平均流況を図示した。
 佐世保港高潮時の流況       佐世保港高潮1時間後の流況
 佐世保港高潮2時間後の流況   佐世保港高潮3時間後の流況
 佐世保港低潮2時間前の流況   佐世保港低潮1時間前の流況
 佐世保港低潮時の流況       佐世保港低潮1時間後の流況
 佐世保港低潮2時間後の流況   佐世保港低潮3時間後の流況
 佐世保港高潮2時間前の流況   佐世保港低潮1時間前の流況

4 あとがき

 寺島水道の海図には、海軍水路部時代のブイ追跡による潮流観測により、最大流速3〜3.5ノットの表記があるが、機器による観測は今回が初めてである。 今回の観測結果は、上げ潮流が若干小さいが、海図記載の値とほぼ同じであり、当時の技術の高さには頭が下がる思いだが、本観測により潮流の予報が行えるということは重要なことである。
 しかし、観測途中、台風の接近により観測を中断され、小潮期の観測がメインで15昼夜の資料が得ることができなかったことは、残念なことと思う。
 最後に、観測の実施及び資料収集にご協力いただきました、各関係機関のみなさまには厚くお礼申し上げます。