日本列島の精密位置 |
海上保安庁海洋情報部では、領海・排他的経済水域等我が国の管轄海域の確定のため、本土及び離島等の位置を正確に決定することを目的とし、平成8年までに人工衛星を利用した観測による海洋測地網の整備を行い、日本列島の精密位置を海図等に反映しました。平成9年以降は、構築した海洋測地網の維持・向上を図っています。
和歌山県那智勝浦町にある下里水路観測所において、本土基準点を世界測地系に結合するために、人工衛星レーザー測距装置(固定式)を使って測地衛星「ラジオス」の定常観測を行っています。 これによって、世界測地系における本土基準点の精密な位置が求められます。 この成果により日本列島の位置を知ることができ、我が国の領海・管轄海域等が確定されました。 今後も国際的な人工衛星レーザー測距観測の枠組みの下、本土基準点を世界測地系に常時結合しておくとともに、構築した海洋測地網のさらなる維持・精度向上のために継続してこの観測を行っています。
固定式レーザー測距装置(下里にある本土基準点)と可搬式レーザー測距装置(主要な島嶼等にある一次基準点)とで国産測地衛星「あじさい」等の同時観測を行い、この観測から、本土基準点に直接関連付けられた一次基準点の位置を精密に求めました。
観測点(観測回数);稚内(2)、十勝(1)、男鹿(1)、隠岐(1)、銚子(1)、対馬(2)、八丈島(1)、枕崎(1)、石垣島(4)、父島(2)、沖縄島(1)、南大東島(1)、硫黄島(1)、南鳥島(1)
主な離島と最寄りの一次基準点の双方に測地用GPSを設置して、比較的近距離間の相対位置を精度よく求めました。
観測点;礼文島、飛島、舳倉島、福江島、甑島、伊豆鳥島、西之島、魚釣島、与那国島、沖ノ鳥島ほか72島
平成14年4月1日に水路業務法や測量法が改正され、現在我が国でもこれまでの日本測地系に代わり世界測地系を使用しています。
次は、日本測地系から世界測地系への移行に関連し、海洋測地網の整備を通じて明らかになった事項を参考までに記述しています。
○日本の位置のずれ
以前の海図で使用していた日本測地系における日本列島の位置は、世界測地系で表した位置に対して、全体的に北西方向に465m程ずれていることが明らかになりました。
また、島嶼の位置もこれまで三角測量や天文観測によって求められていた経緯度とは大きな差があることが分かりました。
普段陸上や海上の位置を表す場合は経緯度と高さで表しますが、測地系とは、そのための基準となる座標系のことです。測地系が違うと同じ場所であっても、経緯度が違ってしまいます。
これまでは歴史的に国々で測地系がばらばらでした。
日本では明治初期に天文観測によって日本経緯度原点(東京、麻布)が定められ、これに基いて海図や地図が作られ、使われてきました。この基準を日本測地系といいました。
近年人工衛星などの観測が可能になると、それらのデータから地球の中心を原点とした全世界的な測地系が決められました。これを世界測地系といい、我が国でも平成14年4月1日から世界測地系を使用しています。
1986年、宇宙開発事業団のH-Iロケット1号機によって打ち上げられた国産測地衛星です。 レーザー測距観測が行えるようにレーザー光を反射するプリズムを搭載した、直径215cmの球形の衛星です。 見た目はミラーボールのようで、日没や日出前後の時間帯には表面に張り付けてある鏡に太陽光が反射して、双眼鏡でもきらきらと光る様子を見ることができます。
海洋防災調査室