先輩からのメッセージ (海洋情報部)
入庁6~10年目
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入庁6年目 | 航海情報課*水路通報室 |
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理学部 | 専攻:化学 |
採用区分:理工Ⅳ |
●バックグラウンドについて教えてください。
学生時代は、分析化学の分野で、電磁波と磁気を使って分子の構造を見る「核磁気共鳴分光法」について研究していました。ちなみに、サークル活動では、戦国時代の山城の跡地を測って、図面に起こしていました(こちらの方が、「海図作製」を行っている海洋情報部への志望に関係しています)。
●入庁の経緯について教えてください。
国家公務員試験を受ける前は、技術に関する仕事がしたいという漠然とした考えしかありませんでした。一次試験合格後に、各省庁の業務を見た中で、化学に関係し、かつ、技術の要素が大きいものとして、海上保安庁海洋情報部が目に留まりました(このほか、財務省の国税庁と税関も気になりました)。
●印象に残っている業務はありますか?
入庁後半年足らずで、外国出張に行ったことです。東アジアの各国を対象に、電子海図に関する研修がベトナムで開催され、電子海図の基礎を学ぶとともに、各国の現状について意見交換を行うという機会が設けられました。ひとりで海外に行くのは初めてでしたし、何日にも亘る英語での講義・議論は初めてで、貴重な経験となりました。
●キャリアパスについて教えてください。
これまで3回の異動がありました。最初は、海図の作製という技術的な仕事、次は、海上保安庁全体の政策に関与する行政的な仕事、その次は、再び海図に関する仕事という形で、技術的な仕事と行政的な仕事に交互に携わってきました。
●現在はどのような業務を行っていますか?
水路通報室では、主に3種類の情報提供を行っています。
・船舶に対して緊急に知らせる必要のある情報である「航行警報」の提供
・海図を最新維持するために必要な情報である「水路通報」の提供
・港湾の地形や法規などを詳しく記述した情報誌である「水路書誌」の提供
私の場合、これらを直接担当するのではなく、関連する予算要求や企画立案等の「お役人的」な仕事、職員の勤務状況の管理や快適な環境作り等の「縁の下の力持ち的」な仕事、国際的な動向把握等の「外交員的」な仕事を行っています。
●最後に、仕事への思いを教えてください。
私たちが提供する情報は、航海の安全に直結するものです。迅速かつ的確な情報提供に貢献できれば良いと思っています。
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入庁8年目 | 海洋調査課大陸棚調査室* |
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理学部 | 専攻:気象学 |
採用区分:理工Ⅲ |
私は自律型潜水調査機器(AUV)という海中ロボット(!?)を運用する仕事をしています。この原稿を書いている翌日から1ヶ月間の海洋調査に行きます。日本周辺の深い海に海中ロボットを潜らせて、海底の火山を調査して、これまで誰も見つけていない熱水活動の存在を明らかにしたいと思います。調査でどんな発見があるのだろうか?という期待が50%、機械がうまく動くだろうか?という不安が50%の複雑な思いで原稿を書いています。「国家公務員総合職」というと、霞ヶ関で机に座って法律や予算とにらめっこというイメージがあると思いますが、こういう仕事もあります。
海上保安庁海洋情報部は伝統的に「海の深さを正確に測る」という仕事をしてきました。海の深さを正確に測り、浅瀬があれば、航海者に知らせることで、海上交通の安全を確保して、日本の海上貿易を支えてきました。近年では「海の深さ」は、航海安全だけでなく、大陸棚の限界画定という日本の新たな国土を決める国家プロジェクトにおいて、最も重要な科学的資料として国連に提出されるなど、海洋権益の確保のために利用されています。そして、現在、私が担当している仕事では、新たなテクノロジーである海中ロボットを用いて、海の深さを超精密に測ることで、海底の地形を明らかにして、海洋資源開発等に役立っています。昨年は、久米島沖の国内最大規模の海底熱水鉱床の発見に貢献することができました。調査を行うたびに新たな発見があり、「こんなに面白い仕事は他にない」と心の底から思っています。もちろん入庁して8年の間には、辛い仕事、楽しくない仕事もたくさんあり、辞めようと何度も思いましたが、上司のおかげもあり、今の仕事に巡りあえて本当に幸せだと思っています。
私は大学・大学院と気象学を専攻していて、海洋情報部が行っている仕事と専門は違いました。就職を決めた理由は「雰囲気が良かったから」「海外とつながりのある仕事をしているから」といった曖昧な理由であり、「この仕事がしたい!」と情熱を持って入庁したわけではありませんでした。ですから、この文章を読んでいらっしゃる皆さんに「やりたいことを探して下さい」など偉そうなことは言えません。一つ伝えたいことは、「会社や役所には皆さんが知らないようなマイナーだけど面白い仕事がたくさんある」ということです。専門が近い皆さんも、全く違う皆さんも、この文章を読んで、海上保安庁海洋情報部の仕事に少しでも興味を持たれた方は、是非一度、説明会に来て、職員に会って、話を聞いて、質問して下さい。皆さんの知識・経験・考え方を役立てる仕事が必ずあります。何かを学び続けられる前向きな姿勢があれば大丈夫です。海の分野は、陸や宇宙に比べれば、変化や発展が遅く、地味で華やかではありませんが、限りなく大きな可能性を秘めています。日本の海の可能性を切り開いて下さる皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。
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入庁8年目 | 海洋調査課大陸棚調査室* |
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理学部 | 専攻:地球化学 |
採用区分:理工Ⅳ |
●キャリアパスと業務内容について
私が入庁時に初めて配属になった部署は、現在の配属と同じ海洋調査課大陸棚調査室でした。
当時は200海里を超える大陸棚を国連に申請するための調査を進めており、
私も大陸棚調査室の一員として、実際に測量船に乗って調査に積極的に関わるとともに、
取得した調査資料の解析作業等を行っておりました。
入庁5年目となる平成22年には、国土交通省総合政策局海洋政策課に出向し、
アジア太平洋海域における海洋環境保護のための国際的な活動の窓口を担当しておりました。
今年4月に2年間の出向が終了し、再び大陸棚調査室に配属になり、入庁時に関係していたデータ解析業務に加え、
これまでの科学的な知見を活かしつつ、新たな調査機器を導入・活用するための中期的戦略を立案する仕事も担当しています。
●海洋情報部に入庁しようと思ったきっかけ
私は大学時代に地球化学を専攻しており、温泉水の水質分析や、火山ガスの化学分析などを行っていました。
そのため研究を通して防災に関心を持ち、防災に関われる仕事に就きたいと思い、海上保安庁を志望しました。
通常、入庁後に大学の研究室と同じような業務に就くことは稀で、
私の場合も、水質分析のような研究と直結するような業務には関わってはいませんが、
大学時代の経験は、研究室での研究内容のみならず、大学の専門科目・教養科目も含めて、思考の際の基礎の知識として役に立っています。
●入庁前と入庁後での海洋情報部の印象の違い
私は入庁前に抱いていた海洋情報部の印象は、大学の研究室にかなり近いものを想定していました。
実際、私が海洋情報部で携わってきた業務は、技術的・科学的な業務が多かったですが、
それでも大学の研究室の雰囲気とはだいぶ異なっていると思います。
大学の研究室との大きな違いとして、大学よりも国民との距離感が近いということが挙げられると思います。
国家公務員として仕事をする以上、国民にその仕事の意味・成果を伝える必要があり、
仕事の結果として得られた成果は、大学の研究者や専門家に伝えるだけでなく、
老若男女を含めた国民全般に「伝える」ことが求められていると感じています。
●仕事で苦労したこと
2年前の国交省への出向の際には、それまでの技術的な業務とは全く異なる行政的な仕事を担当し、当初は非常に戸惑いました。
海洋政策課での業務は、国際会議に向けて会議文書に目を通し、要点・問題点を把握した上で、実際の担当者に繋ぐという、
まさに人と人とをつなぐ役割を担当しておりました。そのような仕事では正確性とともにスピード感が求められます。
また、海洋政策課が属する総合政策局は国土交通省の筆頭局であり、国交省幹部との距離感も近く、幹部に説明する機会も多々あります。
海洋情報部での I 種採用職員は技術的な業務から始まることが多いですが、
年次が上がるにつれて、行政的な仕事が求められる割合が大きくなってきます。
そのような中で、海洋政策課への2年間の出向は、当初は非常に苦労を伴いましたが、
国の法律や予算が作られていく仕組みに携わることができ、非常に良い経験ができました。
●現在の業務に対する意気込み
現在の大陸棚調査室の業務は、2回目の配属ということもあり、担当している業務をこなすことはもちろんのこと、
当室に配属された後輩の指導を含め、自分の担う役割の変化を実感しています。
また、現在大陸棚調査室では、新しい観測機器として自律型潜水調査機器(AUV)を導入することになっております。
新たな装置の導入時には、得てして問題が発生することが多いですが、装置の効果的な運用を実現するべく、現在の業務に取り組んでいます。
●メッセージ
国家公務員の総合職及び I 種採用の職員は、政策の企画立案等の高度の知識を必要とする場での活躍を期待されています。
加えて、海洋情報部では扱っている業務が特に専門的な内容を含むことが多いです。
もちろん、入庁後にも学ぶ時間は十分にありますが、大学のように常に指導してくれる人がいる訳ではなく、
自らが率先して学ぶことが求められるため、求められるハードルは非常に高いですが、成し遂げた時のやりがいは非常に大きいです。
自分の業務を与えられた範囲に狭めることなく、常に新しいことに挑戦する開拓者精神に溢れる皆さんを私たちは歓迎しています。
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入庁9年目 | 内閣官房東京オリンピック競技大会・ 東京パラリンピック競技大会推進本部事務局(出向中) |
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海洋科学部 | 海洋環境学科 |
採用区分:農学Ⅳ |
9年間で6回。
何の数字かといえば、入庁してからの異動の回数です。その多さにギョッとした方もいるかもしれません。
これまでの異動を繰り返す中で、想像もしていなかったようなバラエティ豊かな仕事を経験することができました。「一人の職員」が多様な経験を積めるということが海洋情報部の大きな特徴であり、魅力だと思います。
例えば、データ解析の仕事。
海象を扱う部署で、船舶や衛星情報から得られる水温や流れなどのデータとシミュレーション値から、黒潮をはじめとする日本近海の海流の流路を解析し、インターネットで公開していました。日々、サーバーやデータベース、ソフトのメンテナンスが欠かせないことから、海象に関する知識のほか、プログラミングも学ぶことができました。
例えば、国際会議の仕事。
海洋情報を世界で交換する枠組みを担当していたときのこと。着任後、すぐに海外出張へ行くことになりました。入庁して初めての海外出張。幸いにも他省庁等の方と一緒でしたが、海上保安庁からは一人、タイでの会議へ参加してきました。そこでは、ある意味、会議よりも辛いとも言われるコーヒーブレークを経験し(会議は事前準備ができますが、技術用語が飛び交う雑談は大変です)、何とか出張を終えました。
今は、広報の仕事。
海洋情報部から内閣官房のオリンピック・パラリンピック推進事務局に出向し、東京オリパラ大会に向け、広報・報道の仕事をしています。
ここでは、オリパラ担当大臣の定例記者会見や視察の取材がスムーズに行われるように事前準備や当日の司会等をしています。
海洋情報部は技術分野の仕事が多いイメージがあったかもしれませんが、出向や留学等も含め、実は様々な仕事があります。幅広い経験をしてみたいという方、お待ちしています!
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入庁10年目 | 第十管区海上保安本部海洋情報部監理課 |
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理学部 | 専攻:地球科学 |
採用区分:理工Ⅲ |
みなさんこんにちは。海上保安庁海洋情報部に興味を持っていただきありがとうございます。現在、私は鹿児島県にある第十管区海上保安本部海洋情報部というところに勤務しています。海上保安庁海洋情報部は、本庁海洋情報部とよばれる霞ヶ関だけでなく、地方の機関として北は北海道から南は沖縄県まで各地に11の管区海洋情報部によって構成されています。私も今年度地方に勤務するまでは、入庁以来東京での勤務だったため、今は毎日が新鮮に感じています。本庁海洋情報部の業務内容等については、過去の先輩からのメッセージにお譲りし、ここでは管区海洋情報部での勤務について簡単にご紹介します。
管区海洋情報部では、管内の船舶の航行安全を守るために、管内港湾等の海図を作成または最新維持するための測量を実施しています。また、例えば港湾工事やイベント等の海域利用がある際に付近の船舶に航行安全情報としてお知らせする、というような業務を行っています。私は専門官として上記の業務に携わりつつ、海洋情報業務の広報活動を行っています。海洋情報部の業務が船舶の航行安全の担保に直接的に寄与する場面に関われることや広報活動をとおして地域住民の方々と直接触れ合うことに仕事のやりがいや楽しさを感じます。
最後に、海洋情報部が気になるという方へのメッセージとして、「学生時代の専門はあまり気にしなくても大丈夫」ということをお伝えしたいです。私自身、専攻は地球科学でしたが、海洋情報部には学生時代の知識(例えば地質)を生かせる業務もあれば、専攻とは全く違う分野での新たな学びの機会も多く、みなさんの知的好奇心を満たす業務がきっとあると思います。ここでは、技術系総合職として海洋情報部の技術部門をリードし、技術面から日本の海洋政策を支えたり海洋権益を確保したりするための仕事はもちろん、現場に近い場所で働くことも出来ます。
地球全体に広がる海のように、将来海洋情報部で、地域、国、世界をフィールドに活躍していただけるとうれしいです。
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入庁10年目 | 技術・国際課海洋研究室(留学中) |
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理学部 | 専攻:数学 |
採用区分:理工Ⅱ |
皆さんこんにちは。入庁時を思い出しながら、この稿を書いています。この10年間、仕事に対するモチベーションが変わらず続けてこられたのがなにより幸せだったと思っています。それはきっと海洋情報部の業務が奥深い上に、与えられる裁量が大きいことが関係しているのでしょう。技術面で闊達な議論を許す土壌に、海上保安庁の持つ規律が絶妙なバランスを見せている、そんな印象を持った10年間でした。
私は大学で数学(幾何学)を専攻していたことから、入庁後、我が国の管轄海域を精密に算出するため、地球楕円体上の距離計算を担当しました。その後、海上保安庁の窓口にあたる総務部政務課でより行政的な業務に携わりました。ちょうど尖閣諸島中国漁船衝突事案や東日本大震災といった、我が国全体に係る様々な問題が発生したときで、チームで困難にあたることの重要性が分かりました。その後も、様々な業務に携わる中で、技術面だけでなく海洋境界に係る幅広い知見を持つ人材になることが、将来の役に立てると思い、人事院制度による海外留学を希望しました。無事に希望が通り、この2年間、英国ダラム大学、キングスカレッジロンドンの修士課程で地理学、地政学を専攻し、海洋境界に関する詳細を学んでいます。日本ではあまり知られていない分野ですが、水路関係者が貢献してきたことも多く、技術と国際法が一緒になって成長してきた、そんな分野です。
以前に後輩が本稿で書いていましたが、あまり知られていなくとも、面白く、そして大事なことが沢山あるのは確かです。海上保安庁海洋情報部は小さな組織ですが、そういった大事な業務を積み重ねてきました。10年前の自分や、このウェブサイトを見ている誰かにもし何かを言うとすれば、海上保安庁に入って、思った通り大変だけど、でも思ったよりも楽しみながら、そして思ったよりもきっと成長できるよ、と言うかもしれません。ぜひ一度当庁に足を運んでみてください。