先輩からのメッセージ (交通部) 平成28年度版
○H28入庁(1年目) | 技術部門 | 「航路標識はいいぞ」 | |
○H27入庁(2年目) | 技術部門 | 「海保と私、ボディビル」 | |
○H20入庁(9年目) | 留学・企画部門 | 「技術のスペシャリストから海のジェネラリストへ」 |
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交通部技術系総合職の採用ページをご覧いただき、ありがとうございます。4月に入庁したばかりの私ですが、
1年ほど前、このページを読みイメージを膨らませたことを思い返しつつ、入庁し感じた交通部技術系総合職の魅力を、
現在携わっている技術部門を中心に書きたいと思います。
○現在の業務 ─交通部整備課─
私は4月に入庁し、交通部整備課というところに所属しています。海上保安庁交通部は四方を海で囲まれた我が国の生命線である「海上交通の安全確保」と「運航効率の増進」を任務に様々な取り組みを行っています。それら任務を達成するためのハードウェアとして航路標識や海上交通センターなどを設置しています。整備課は、これら施設の整備や保守を行っている交通部の技術部門です。その中で私は海上交通センターや船舶通航信号所で用いられる船舶動静レーダ、情報処理装置といった機器の整備を担当しています。
現在、東京湾に一元的な海上交通管制の構築するという交通部のビッグプロジェクトに、機器の整備という面から携わっています。
○入庁まで
私は学生時代は、情報工学を専攻しており、画像解析を用いて物体の3次元形状を計測する技術の研究をしていました。試作装置に用いるレンズ系を設計したり、プログラムと格闘したりといったことをやっていました。就職先を決めるにあたり、「学生時代に学んだ技術を使いたい」「でも技術だけを突き詰めていくのも・・・」などと二律背反なことを思いながら、ふと業務説明に参加しました。そこで、統計データ(いわゆるビッグデータ)を用いた航行管制支援という最新の技術を用いた開発の話、また、一方で、技術的知見を背景にそれを社会に反映していく施策立案、そして海上保安庁ではそのどちらも携わることができるというお話を聞き、それまでにイメージしていた海保の業務(海難救助!領海警備!船!)をよい意味で裏切られ、入庁を決意しました。
○交通部の技術部門の魅力
海上保安庁では、船舶交通の安全を確保するために、灯台や灯浮標などの船の道しるべとなる航路標識を設置しているほか、多くの船舶が行きかい海上交通の要所となっている東京湾等では海上交通センターを設置し、航海の安全に必要な情報の提供や航行管制を行っています。
入庁前、あるいは業務説明でお話を聞くまで、私は、灯台、航路標識と聞いて、技術的に古い(!!)ものだと思っていて、技術といわれてもピンときませんでした。
しかし、実際に業務を始めて技術部署のベテランの職員からお話を聞き、歴史を紐解いてみると、当庁(や戦前の前身組織)が行ってきた航路標識整備の歴史は、常に最先端の技術を導入しつづけるものであったと言っても過言ではありません。明治初期にお雇い外国人により建てられた西洋式灯台(当時の最新技術)、1950年代にいち早く導入をはじめた太陽電池を始めとする新しいエネルギーの利用(他にも風力、波力、過去には燃料電池も)、全世界を8つのアンテナで結び強力な電波でもって船に位置情報をを与えたオメガシステム(GPSに取って代わられ現在は運用修了)、1980年代から始まったLED光源の利用などなど。このような伝統的に最新技術をキャッチアップしていく気風を知りました。近年ではクラウド技術を用いた航路標識監視技術や、画像認識による小型船舶監視、次世代AIS(VDES)の日本主導による国際標準化などICTを用いた試みも行われています。行政機関ながら、最新技術を幅広く扱うことができる環境は交通部総合職の魅力の1つでしょう。また、海上保安庁は現場を持っており、自分の手がけた機器・施設・技術etcが現場で実際に運用される様子に触れることができるのも魅力だと思います。
過去、現在の最新技術に触れ、そして未来の技術を導入し、また、それらが実際にモノとして役立っていることを実感できる。とても面白い職場だと思います。
○おわりに
今回は入庁して配属された海の交通を守るハードウェアの整備を担う技術部門の話を中心に書きましたが、制度等の企画立案といういわばソフトウェアの設計も担うことにもなります。私のようにどちらもやりたいなー と思っている方にもおすすめの職場だと思います。私はまだ見ぬ世界ですが、他の先輩のメッセージから魅力を感じ取っていただければと思います。
楽しい先輩方ともども、海上保安庁では皆さんの訪問をお待ちしております。
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年度末に初任部署が組織再編の波にのまれ、一抹の寂しさを感じながらこの原稿を書いております。
さて、この際なにを書いてもよいということですので、私が当庁に任官してから初年度を終了するまでの浅い経験をベースに、随所で紹介されるような「次世代海上交通システムの構築」等といった抽象的な”大きな仕事”を推し進めていくための日々の細かい業務についてつらつらと書いていこうと思います。
初年度に配属された安全システム開発室は、交通部における先進的な技術開発を企画立案するとともに、時には庁内の試験研究部門である海上保安試験研究センターと協調して自分たちの手により試作を行うような部署でした。
とはいえ、日頃の業務の多くは業者に発注した技術開発案件のハンドリングや内部通達の制定といった一見地味?な仕事であり、または航路標識関係の国際会議における交通部の対処方針を策定するような行政的な仕事でした。
ひとくちに技術開発案件のハンドリングとくくることは簡単ですが、その遂行には高度な技術的知見が求められます。技術開発案件を開始するためには行うべき業務の内容を仕様書に落とし込む必要がありますが、これはざっくりといえば「今年度に解決を求められている課題」と「今年度の技術水準(と予算)で遂行できる業務」をマッチングさせるという作業になります。
すなわち、前年度までに行われた技術開発の内容を理解し、政策的な流れの中で今年度の業務を位置づけ、そしてそのための技術的な選択肢を検討していきます。同時に、不定期に飛来する政策文書の意見照会に対して、的確な意見を付していく必要もあります。これら一連の流れの前提は、まさしく技術の限界を知るということであり、その知見が我々の武器となり、あるいは防具となっていくわけです。この知見があるからこそ、国民の血税を無駄にしないよう適正な予定価格(たまに漏洩されて逮捕者が出るアレです)を積算したり、あるいは業務の方向修正を適切にかけたりすることができます。理数系の学生として日々当たり前のように使っていた統計モデルやIPネットワークの知識が、ひいては国益を増進するための原動力となる―ありきたりな表現をすれば、超エキサイティングといったところではないでしょうか。
内部通達の制定という事務作業も、開発した技術を実用するための重要なステップです。業者に技術開発を実施させて報告書を提出させるだけでは、真に投入した税金を活用したことにはなりません。開発した技術を実用するためには、実機を投入するといった物質的な手段はもちろん、たとえば次の技術開発につなげたり、あるいは内部通達として庁内で活用したりするといった手段が採られます。
しかし、本庁で通達を制定する私には当然現場での運用経験がないため、ただ技術を内部通達に落とし込むだけでは現場の運用を破壊し、極端な場合、内部通達そのものを空文化させるおそれがあります。この「現場の運用」というものを理解するためには、メールや電話による連絡は当然のことながら、出張して直接顔を合わせることがのちのち重要となります。出張により現場という空間を視覚的にとらえることはいかなる文献よりも饒舌ですし、現場の職員との間でも、一度顔を合わせた仲間同士として細々としたことまで相談という形で情報共有できる関係を築くことができます(余談ですが、現場出張の際には当然、頻繁に船に乗ります。東京湾のブイ交換に立ち会った際には、海域ごとの特色ある生物相(ムール貝だけはどこにでもいますが…)にまず驚きました。快適そうなクルーズ船の往来する松島を、井の頭公園のレンタルボートに船外機をつけたような程度の船で、真夏の陽光を間近に反射する海面に目を細めながら滑走したのもまた思い出の一幕です。また、出張先では様々な人々の会話があり、普段本庁にいるだけでは知ることのできない余談を聞くこともひとつの目的です。)。
もちろん、本庁の先輩方にも現場経験の長い方が多く、不明点も体系立てて質問していくうちに自ずと理解できるようになります。ここで重要なのは、現在の運用が立脚している現在の通達を制定経緯から理解することです。私が廃止制定方式で改正した2本の通達は実に30年モノでしたが、参照した中には戦後の黎明期に制定された縦手書きの達筆な通達もあり、先輩方の遺された血と汗と涙とカビのほのかな香りに包まれて連綿とした灯台史に思いを馳せながらする作業でした。ともあれ、こうして理解した運用に技術を織り交ぜて、厳格な法令用語に沿って練り上げていけば、次の時代に向けた通達案が完成するというわけです。こうして起案した通達案はさながら我が子のようで、決裁の過程で文言がさらにシェイプアップされていく我が子をみると、だんだんと楽しい気分になってきます。
ここまでは比較的よくある行政官の仕事を紹介しましたが、少しそれとは離れた現業的な仕事についても紹介します。詳細は後述しますが、工学区分での私の専門科目は情報工学であり、趣味でもUNIX系OSに触れていました。
この経験をもとに、部内各所よりの依頼を受け蓄積されたデータを統計的に解析するサブ業務を持っていたことがあります。また、大型灯台に向けた新たな光源を開発するため、マイコンのプログラムを書いてVVCFインバータを試作したり、あるいはレンズに入射する光について図面を引いて計算したりといった業務も経験しました。これらの業務に欠かせなかったと思えることは、ひとつに各々の専門分野を重ね合わせてシナジーを生み出せるような知己を得ることであり、ふたつに随所に眠る資料を漁って読みふけることです。前者については、海上保安試験研究センターという試験研究部門がある中で幸いにも師と仰げるような知己を得ることができ、自分が苦手とする分野について様々な助言を得ることができました。後者については、庁内さまざまに眠っている歴史的な資料を見つけ出し、時には当時の担当者であった上役の思い出話を手がかりに読み解いていくことで、現存する設備を理解することができました。決して受け身の姿勢で甘んじることなく積極的に物事に興味をもって吸収していくことは何事についても肝要ですが、こと私の業務分野ではきわめて重要な意味を持っていたと感じています。
さて、この機に私が海保を志望した経緯を思い出してみます。実は、私は大学では生命工学を専攻しておりました。毎日を細胞と過ごす日々もそれは楽しいものでしたが、当時趣味としていた情報工学に多大なエネルギーをつぎ込んだ結果、ふと受験した国家公務員採用総合職試験では工学区分で合格することとなりました。その後はよくある流れのとおりであり、私が官庁訪問をした頃はまだ梅雨の終わり頃の季節でしたが、雨の中をスーツで練り歩いたことを懐かしく思います。合格した専門科目である情報工学が趣味始まりであったこともあり、当初から(無謀にも)「技術を即物的に活かすことのできる職場」を探していた私は、海保交通部の業務説明を受けて入庁を堅く志望するに至りました。その後は入庁当初より前述のような技術を振り回す機会に恵まれ、本当に楽しい職場に巡り会えたものだと実感しています。
そういえば、皆さんにとっての海保のイメージとはどのようなものでしょうか。やはり力強いマッチョのイメージが多いものと思います。本稿のタイトルに「ボディビル」とありますとおり、私も楽しい先輩方と肉と炭水化物に囲まれて日々横に大きく成長する日々を送っています。マッチョのイメージをビジュアルで粉砕する、そんな愉快な仲間にあなたも加わってみませんか?
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このページを見ている皆さんの中には、将来の就職先についてあれこれ思い悩んでいる方も多いでしょう。もう10年近く前ですが、学生時代の私も皆さんと同じように悩んでいました。私からのメッセージでは交通部技術系総合職の魅力について、私の経験を通じてご紹介します。
○魅力1:幅広い業務
海上保安庁は海に関連する業務のすべてに関わっていると言っても過言ではありません。技術系総合職職員は海難救助や領海警備、災害対応等の業務の技術的な側面のみならず、政策的な側面から携わる機会も多くあります。私の場合は、東日本大震災等を踏まえた海上保安庁の体制強化について政策立案に携わる機会がありました。また、海上保安レポートの執筆を3年間担当し、海上保安業務全般について国民の皆様にわかりやすくご紹介するための業務にも関わりました。
技術系総合職職員は政策的な仕事はもちろんのこと、各々の技術的な専門性を活かした仕事にも携わります。海上保安業務は幅広い理工学的な知見をもとに成り立っています。例えば、海の安全を守るために海上保安庁が設置している航路標識は、様々な工学的な知見を結集したものであり、最新の知見に基づき常に性能向上が図られています。これらの性能向上に必要な知見は日々拡大しており、現在無関係に見える分野も将来的な航路標識の性能向上に重要な役割を担うかもしれません。このような理由から、海上保安庁では多様な技術的背景を持つ人材を求めています。海上保安庁では、役職や年次に関係なく、前向きかつ合理的な提案を受け入れる度量の大きさを持った組織です。皆さんの専門性が活かされる機会がきっとあると思います。
○魅力2:豊富な研修
海上保安庁に興味を持っていただいている皆さんの中には、船や海、海上保安業務に関する知識が乏しいことを理由に入庁を不安に思っている方がいらっしゃるかもしれません。学生時代、私もその一人でした。当時、私は船や海に全く興味がなく、私の海上保安業務に関する知識はドラマ「海猿」と漫画「トッキュー!!」から得たものしかありませんでした。採用面接でその旨を話し、面接官の方々が苦笑されていたことを今でも覚えています。
しかし、私の経験から言えば、入庁前の知識の乏しさで業務に支障が生じたことは全くありません。海上保安庁では豊富な研修を実施しており、それら研修を通じて入庁後に業務に必要な知識を習得することが可能です。私は海上保安大学校の練習船「こじま」による遠洋航海実習(世界一周航海)に参加する機会をいただき、船の運航や海に関する基本的な知識を習得することができました。
また、自分自身の問題意識に応じて、人事院等の研修制度を活用し、行政官としての能力を高めることも可能です。私は、最新の科学技術を政策に反映させるための専門的な知見を得ることを目的に、人事院長期在外研究員として、米国の大学院修士課程に2年間留学する機会をいただいています。
最後になりましたが、海上保安庁では、理工学的素養に基づく課題解決能力を有しつつ、庁内の文化に新しい風を吹き込んでくれるような多様な人材を求めています。霞ヶ関で皆さんに会える日を楽しみにしています。