観測で何が分かる?

  下里水路観測所をはじめとする世界各国のレーザー測距観測のデータにより、地球重心(中心)の精確な位置が求まります。また、GNSS(※1)やVLBI(※2の)観測データなどを組み併せることで地球の姿勢(自転軸の方向)、大きさや形なども精度良くわかります。これにより、地球にかける緯度経度の網(測地系)を正確に決めることができます。
  そのうえで、測量船や測量機器等を使用して測量(水路測量)を行うことにより、日本海域周辺の水深や岩礁、海岸線等の位置を測り、海図を作製し、航海の安全を図るとともに、それを基に領海や排他的経済水域の画定にも役立てています。
  地球上で精確な位置を知るためには測地系を維持管理することが不可欠ですが、プレート運動や地殻変動でダイナミックに変動していることから継続して観測を行う必要があります。
  下里水路観測所では、人工衛星レーザー測距観測だけでなく、ごく近傍でGNSS観測も並行して行うことで、精度の維持を図っています。
  また両観測の結果は海上保安庁海洋情報部で解析され、地震予知連絡会などにも提供されており、地震・防災に対しても役立てられています。
  
SLR GNSS
  
    ※1 GNSS : GPS、準天頂衛星、GLONASS、Galileo等の測位衛星
    ※2 VLBI :天体からの電波を利用して、複数地点間のアンテナの位置関係を測定

過去の成果

  かつて日本の海図は日本測地系という日本独自の基準により作成されていたため、世界測地系の海図とズレが発生していました。同じ場所に居ても地図上では違う場所にいることになってしまいます。

☆測地系の違いによるずれ☆ ☆測地系に関して☆
(イメージです。実際のズレの量は各地で異なります。) (地球の画像の出典:NASA's Goddard Space Flight Center)
実際の地球はでこぼこしており、球ではありません。そこで似たような形の楕円体を地球と見立て、その中心を原点として任意の位置を座標で表すシステムを測地系といいます。


  そこで観測結果を用いて日本の海図を日本測地系から世界測地系へと移行させ、日本の海図を世界基準に合わせました。これにより日本の海図と世界の海図とで地図上のズレが無くなり、船舶航行の安全が確保されるようになりました。
 
 
参考: 日本列島の精密位置(海上保安庁海洋情報部のページに飛びます)
   : 地震調査委員会等提出資料(海上保安庁海洋情報部のページに飛びます)

下里水路観測所での人工衛星レーザー測距観測の測得数の推移

人工衛星が観測所上空を1度通過することを「パス」と呼びます。人工衛星レーザー測距観測では飛来する人工衛星を追尾して観測を行い、観測に成功したパスの数を測得パス数としてカウントします。この測得パス数が2023年6月7日に5万パスに達しました。

1度のレーザー測距観測に要する時間は5分~1時間程度と、衛星毎に異なります。観測用望遠鏡の向きと発射されるレーザー光の発射タイミング当はNASAなどから予め提供され衛星軌道情報から計算した予測位置に自動制御されていますが、実際の位置と予測位置との間にはわずかな「ずれ」があるため、そのままでは人工衛星からの反射光を受信出来ないことが多々あります。観測者は観測時間の間、微弱な受信信号をたよりに望遠鏡の向きなどを微調整して、人工衛星からの反射光を探し出す必要があります。こうした観測を41年間、多い時には日に30回近くも観測しつづけて5万パスという測得数に達しました。

測得パス数の推移
(1982.03.09 ~ 2023.06.07)
  • 1982.03.09 初めての試験観測に成功(1パス目)
  • 1982.04.01 人工衛星レーザー測距業務開始
  • 1999.12.08 1万パス達成
  • 2005.01.22 2万パス達成
  • 2011.09.09 3万パス達成
  • 2017.10.31 4万パス達成
  • 2023.06.07 5万パス達成
年別測得数と累積測得数