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日本海呼称について

1.日本海の呼称について


 日本海(Japan Sea)という呼称は、国際的に確立された唯一の呼称です。日本海(Japan Sea)の呼称は、日本が鎖国状態にあった19世紀前半から既に国際的に認知され、定着してきました (参考1:日本海の呼称の確立について)。

 英国、米国をはじめとする諸外国も海図を作成する際には、日本海(Japan Sea)の呼称を用いています。これは、「国際水路機関」(IHO)が刊行し、 世界の国々が海図を作成する際に参照する「大洋と海の境界」という海の呼称のガイドラインにおいて、日本海(Japan Sea)と定められているからです (参考2:「大洋と海の境界」が定める日本海の呼称)。


2.日本海の呼称に対する韓国の主張


 1992年、韓国は、「第6回国連地名標準化会議」において、「日本海の呼称が普及したのは日本の拡張主義や植民地支配の結果である」等と主張し、 日本海(Japan Sea)の呼称に異議を唱え始めました。また、韓国は、1997年から「国際水路機関」(IHO)の場でも、「大洋と海の境界」が定める日本海(Japan Sea)の呼称に 「東海(“East Sea”)」を併記すべきと主張し始めました (参考3:国際水路機関(IHO)での動き)。

 以後、韓国は、あらゆる機会を捉えて、日本海の表記を「東海(“East Sea”)」に改めるか、 日本海(Japan Sea)と「東海(“East Sea”)」を併記すべきと主張しています。


3.国際水路機関における動向


 「国際水路機関」(IHO)は、水路図誌(海図、灯台表など)の最大限の統一などを目的として活動する国際機関です。 IHOは「大洋と海の境界」の初版(1928年)から一貫して、「日本海(Japan Sea)」を日本海の呼称として定めてきました。

 海の呼称に関するガイドラインである「大洋と海の境界」で、日本海の呼称として日本海(Japan Sea)と「東海(“East Sea”)」を併記することは、 航海者に混乱を招くことになります。 これは、水路図誌を最大限統一するというIHOの目的に反する行為といえ、受け入れられません(参考4:多くの海域で見られる「東海」の呼称)。

 海上保安庁は外務省と連携し、日本海Japan Seaは国際的に確立された唯一の呼称であるという確固たる原則の下で、 根拠のない韓国の主張に対し、IHOの場等で正しい歴史的事実に基づき反論するとともに、我が国の立場に対する国際社会の理解と支持を求めていきます。



参考

参考1. 日本海の呼称の確立について


 日本海Japan Seaという呼称の初出は、マテオリッチによる「坤輿万国全図(World Atlas)」(1602年)であると言われます。

 18世紀の終わりまで、日本海は未知の海域であり、当時の西欧の地図に見られる日本海の形状は、現代の我々が知る形状とは程遠いものでした。

 しかしながら18世紀後半になると、正確な測量に不可欠な、高い精度での経度の測定を可能とするクロノメーター(海上で正確な時刻を計測するための時計)が発明されるなど、 測量技術が大幅に向上しました。日本海でも、ラペルーズ(仏)、ブロートン(英)、クルーゼンシュテルン(露)等の探検家により、 最新の測量技術を用いた調査が行われました。こうして作成された正確な地図に基づいて、クルーゼンシュテルンは日本海の呼称について、 「人はこの海を朝鮮海とも名付けたが、この海は朝鮮の海岸にはごくわずかな部分しか現れてこないので、この海は日本海と名付ける方が良いであろう。」 (「世界周航記」、1812年)と記しています。

 その後も西欧の地図学者、探検家及び航海者等による日本海の調査がさらに進み、19世紀の初めには、日本海(Japan Sea)が、 この海域を示す呼称として国際的に確立することになりました。

 英国(1863年から)、米国(1854年から)、ロシア、フランスの外地海図は、各国水路部が日本海海域の海図の刊行を始めて以来、全て日本海を単独で採用しています。


グラフ 日韓以外で作成された地図における名称の推移




 韓国は、日本海(Japan Sea)という呼称が一般的になったのは、「日本の拡張主義や植民地支配の結果」と主張しています。

 しかし、日本と韓国以外の国で作成された地図における日本海の呼称の歴史的な推移を調査した結果によると、「東海(East Sea)」の呼称は他の呼称に比べて非常に少数であったこと、 日本海(Japan Sea)の呼称は日本が鎖国状態にあった19世紀前半から既に国際的に認知され定着していたことがわかっており、韓国の主張は正しくありません。


参考2. 「大洋と海の境界」が定める日本海の呼称

 「大洋と海の境界」は、初版(1928年)から一貫して日本海の呼称を日本海(Japan Sea)と定めています。

 これは、「大洋と海の境界」が刊行された1928年、既に日本海(Japan Sea)の呼称が日本海を示す唯一の呼称として国際的に確立していたという事実があったからです。 この呼称が確立する過程への我が国の関与は、何らありません(参考1.日本海の名称の確立)。 また、「大洋と海の境界」の初版の作成にあたって、我が国が何らかの働きかけをしたという経緯もありません。 これは、「第1回臨時国際水路会議」(1929年4月)の議事録に残されている次の我が国発言からも明らかです。

 「日本代表は前回の1926年の会議で提出された提案(「大洋と海の境界」の作成)には反対した。 なぜならば、当該提案は国際水路機関の会議の目的を越え、政治的及び外交的問題であると考えているからだ。 しかし、日本代表としては、事務局が提示した基本的考え方に従い問題を研究した結果、海の境界を区切ることに賛成することとした。」

 もし当時、我が国が、「大洋と海の境界」を通して日本海(Japan Sea)の呼称を世界に広めようと企図していたのなら、 このように海の呼称及び境界を巡る政治的、外交的問題を懸念するはずがなく、 しかも、「大洋と海の境界」の作成に一時的にせよ反対することなどなかったでしょう。


図 「大洋と海の境界」


参考3. 国際水路機関(IHO)での動き

出来事 内容
1921年 「国際水路局」の設立
日本の「国際水路局」加盟
「国際水路局」は「国際水路機関」の前身にあたる組織。
1928年 「大洋と海の境界」初版の刊行 「国際水路局」が刊行。日本海(Japan Sea)は単独での表記。
1937年 「大洋と海の境界」第2版の刊行 日本海(Japan Sea)は単独での表記。
1953年 「大洋と海の境界」第3版の刊行 日本海(Japan Sea)は単独での表記
1957年 韓国の「国際水路局」加盟  
1970年 「国際水路機関条約」の発効 「国際水路局」は、本条約に基づき「国際水路機関」(IHO)に移行。
1986年 「大洋と海の境界」第4版の草案完成 日本海(Japan Sea)は単独での表記。韓国は「日本海(Japan Sea)」の表記に異議を唱えず。
しかし他の海域に関して加盟国間の調整が難航し、刊行に至らず。
1991年 韓国の国連加盟  
1992年 第6回国連地名標準化会議 韓国が国際社会に対し初めて、公式に日本海の名称を「東海(“East Sea”)」と改めるべきと主張。
1997年 第15回国際水路会議 韓国がIHOで初めて、「大洋と海の境界」での日本海(Japan Sea)と「東海(”East Sea”)」の併記を主張。
韓国は以降の「第16回国際水路会議」(2002年)、「第17回国際水路会議」(2007年)でも、同様の主張を繰り返す。
2002年 「大洋と海の境界」第4版の草案に関するIHB回章の発出 韓国の主張を受け国際水路機関事務局(IHB)は、日本海関連ページを白紙とした「大洋と海の境界」第4版の草案を全加盟国に送付し、賛否を問う。 我が国はIHBに対し本草案の送付に強く抗議し、その結果、IHBは草案を撤回。
2012年 第18回国際水路会議 韓国は、「大洋と海の境界」での日本海(Japan Sea)と「東海(”East Sea”)」の併記を求める主張を繰り返すが、議論の結果、現行版について新たな決定は行われず。
参考:外務省報道発表資料(外務省ホームーページ)
2017年 第1回国際水路機関総会 「大洋と海の境界」の今後に関する非公式協議を設置し、協議結果を第2回国際水路機関総会に報告することを合意。
2020年 第2回国際水路機関総会 日本海(Japan Sea)が単独で表記されている「大洋と海の境界」第3版を引き続き公に利用可能な国際水路機関出版物とすることを承認。

 「大洋と海の境界」では1928年の初版の刊行から一貫して、「日本海(Japan Sea)」を単独で表記しています。 しかし韓国は、90年代に入るまでこの問題を「国連地名標準化会議」あるいは「国際水路機関」(IHO)において提起することはなく、 自国の公式海図にも日本海を記述し、使用していました。 すなわち、韓国自身が第二次世界大戦の日本の影響下を離れても「日本海」という名称に異議を唱えてこなかったという歴史的事実があります。 韓国が自国の海図に「東海(”East Sea”)」を記載したのは、1995年のことです。


参考4. 多くの海域で見られる「東海」の呼称

 「東海」という海域名は、日本海以外の海域でも複数見ることができます。

 東シナ海は、国際的には「Eastern China Sea」と呼ばれますが、中国は国内でトンハイ(Tonghai)と呼ばれ、漢字では「東海」と表記されます。 南シナ海の呼称は、国際的には「South China Sea」ですが、ベトナムでは「東海」を意味するビェンドン(Biendong)、その英語表記として「East Sea」を用いています。 「東海」はヨーロッパにも見られ、バルト海を、ドイツとスウェーデンではそれぞれ「東海」を意味するオストゼー(Ostsee)、ウステルヒョーン(Ostersjon)と呼んでいます。

 このように「東海」という呼称は、多くの海域で用いられている呼称です。 世界中、複数の海域について使われている地域的な呼称を、国際的に用いることは、世界の航海者に混乱を招きかねません。

 ちなみに韓国では、朝鮮半島を取り巻く海を、自国を中心にしてその方角に応じ、「西海(Sohae)」、「南海(Namhae)」、「東海(Donghae/Tonghae)」と呼んでいます (英語ではそれぞれ、West Sea、South Sea、East Seaに相当)。これらの呼称のうち、改称を主張しているのは日本海に関してだけです。 韓国は、黄海をWest Seaに、東シナ海をSouth Seaに変更すべきという主張は行っていません。



リンク


日本海の呼称に関する我が国立場(外務省ホームページ)

国際水路機関(IHO)(IHOホームページ)

国際水路機関(IHO)に関する情報