国際協力 ~世界的な水路分野の発展、海洋調査・研究のために~
- 我が国は、国際水路機関(IHO)に加盟し、各種国際会議に積極的に参加し水路分野に関する世界的な統一基準の策定に寄与するとともに、各国と水路データ・情報などの交換を実施するなど世界的な協力関係を構築しています。
- また、ユネスコ政府間海洋学委員会(UNESCO/IOC)や国際学術会議(ISC)などが推進する海洋調査研究プロジェクトに参加し、国際的な地球環境変動の解明や海洋環境保全に関する取り組みにも貢献しています。
- さらに、海外技術協力として毎年開発途上国の水路技術者を受け入れ、各種研修を実施し技術移転を行うとともに、開発途上国からの要請に応じて専門家を派遣するなど、各国の水路業務の発展に貢献しています。
水路分野における国際連携
IHO事務局
第1回IHO総会(2017年4月)
国際水路機関
(IHO:International Hydrographic Organization)
国際水路機関(IHO)は、海図や航海の案内書である水路誌などの「水路図誌」を改善し、全世界の航海をより容易かつ安全にすることを目的とし、諮問的かつ純粋に技術的な性格を有する機関として昭和45年に「国際水路機関条約」に基づき設立された国際機関です(2022年10月現在、加盟国:98カ国)。IHO事務局はモナコ公国に置かれています。
海洋情報部では、IHOの各種委員会の委員を務めるなど、IHOの活動に積極的に参加し、水路技術に関する統一基準の策定や水路業務従事者の能力向上に関する取り組みなどの推進に寄与しています。 また、2008年からIHO事務局に職員を派遣し、IHO事務局の業務支援を行うとともに連携を強化しています。
第14回EAHC総会(2022年9月)
INT海図 K区域
東アジア水路委員会
(EAHC: East Asia Hydrographic Commission)
IHOでは地域毎に水路委員会を設立し、地域内における水路業務の実施や協力を推進しています。東アジア水路委員会(EAHC)は地域水路委員会の一つで、10の国・地域(インドネシア、韓国、北朝鮮※、シンガポール、中国、日本、フィリピン、マレーシア、タイ及びブルネイ)が加盟しています。(※日本は国家承認していない。)
日本は、EAHCの設立以来、常設事務局として地域内における水路業務の発展に取り組んでおり、2018年9月からはEAHCの議長国を務めています。また、日本は、世界をカバーする中大縮尺の国際紙海図(INT海図)の整備を効率的に推進するため、東アジア及び北西太平洋域(通称「K区域」)におけるINT海図調整者の役割を担っています。
NAVAREA XI区域(黄色)
NAVAREA XI航行警報
海上での射撃訓練など、航行船舶の安全に支障を及ぼす情報は、主に無線により航行警報として各国から船舶に提供されています。
IHOの委員会の一つである世界航行警報小委員会では、世界を21の区域に分け、世界の航行警報業務の調整を行っており、日本は、第11番目の区域(NAVAREA XI)である東アジアの区域の調整者として、地域の航行警報の実施状況を把握し、必要な助言を行っています。
海洋調査・研究における国際連携
第21回IODE総会
気候変動の解明・海洋環境の保全に向けて
海洋情報部はこれまで、ユネスコ政府間海洋学委員会(UNESCO/IOC)や国際学術会議(ISC)などの国際機関が推進する様々な海洋調査研究プロジェクトに参加し、気候変動や海洋環境変動メカニズムなどの解明に貢献してきています。
海上保安庁が管理している南極昭和基地の験潮所は、世界的な潮位の観測モニタリングネットワークである全球海面水位観測システム(GLOSS)に登録され水位変動研究のみならず、津波など海洋防災のための監視活動にも活用されています。
また、海洋情報部にある日本海洋データセンター(JODC)は、UNESCO/IOCが推進する国際海洋データ・情報交換システム(IODE)の日本の代表機関(国立海洋データセンター)として、国内の各機関が取得する海洋観測データを一元的に管理し利用者に提供を行うとともに、海外の国立海洋データセンターと海洋データを交換することで、様々な海洋調査研究や利用開発を支えています。
海外技術協力
マラッカ・シンガポール海峡
技術協力署名(2014年12月)
海外への技術協力
海洋情報部は、独立行政法人国際協力機構(JICA)等と協力し、海外からの要請に応じて専門家を派遣するなど各国の水路業務の発展に貢献しています。
マラッカ・シンガポール海峡は、我が国の経済を支える重要なシーレーンであることから、沿岸国からの要請を受け、1969年からJICA等の事業により共同水路測量実施ため職員を派遣するなど、累次にわたり技術移転を行っています。その成果として、1982年には紙海図を、2005年には航海用電子海図(ENC)を沿岸国とともに共同刊行しています。
その他主な海外への技術協力として以下の事業を実施しています。
2022- 年 | ソロモン諸島・電子海図策定支援プロジェクト(JICA) |
2013-2016年 | カンボジア・電子海図策定支援プロジェクト(JICA) |
2011-2012年 | ベトナム・海賊対策及び海洋の安全のための支援業務(国交省ODA) |
2010年 | パプアニューギニア・アジア周辺諸国における電子海図整備・普及支援事業(国交省ODA) |
2008-2009年 | スリランカ・アジア周辺諸国における電子海図整備・普及支援事業(国交省ODA) |
2006-2007年 | スリランカ・津波防災対策支援事業(国交省ODA) |
2000-2005年 | フィリピン・電子海図作製技術移転(JICA) |
1999-2003年 | モーリシャス・水路部設立支援(JICA) |
1995-1999年 | フィジー・北部ラウ諸島海域海図作製調査(JICA) |
港湾測量実習
JICA課題別研修
海洋情報部は、独立行政法人国際協力機構(JICA)と協力し、アジアやアフリカなどの開発途上国の水路測量技術者を対象とした集団研修「海図作製技術 -航行安全・防災のために-(国際認定B級)コース」(約6カ月間)を1971年から毎年実施しています。
本研修には2020年までに44カ国から442名の水路技術者が参加し、各国の水路業務分野で活躍する人材を輩出しています。
※ 2020年度及び2021年度の研修は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止となりました。
- 受け入れ実績(2021年6月時点)
- 2022年度研修について(広報)
- 研修紹介動画(Youtubeリンク)
その他の国際連携
海図・海底地形図作製に関する国際連携
IHOでは、2009年度から日本財団(NF)の助成を受け、各国の海図専門家を育成するためのプロジェクト(日本キャパシティビルディングプロジェクト)として、毎年英国海洋情報部(UKHO)において15週間の研修を実施しており、海洋情報部はこのプロジェクトの運営に参画しています。本プロジェクトは、2020年度からプロジェクト実施体制の変更に伴い名称をIHO-NF GEOMACプロジェクトに改め、UKHOの協力を得て海図専門家の育成事業を継続しています。本プロジェクトには、2020年までに41カ国から72名が参加しています。
IHOとIOCでは共同で全世界を均質にカバーする海底地形図である大洋水深総図(GEBCO: General Bathymetric Chart of Oceans)の編集を行っており、1903年に第1版が作製されて以来、海洋情報部からの参加も含め世界の専門家の協力により改訂が重ねられています。
GEBCOの作製に貢献できる若手研究者の育成を目的に、2004年度から日本財団の助成を受け、米国ニューハンプシャー大学において毎年、約1年間の研修が実施されています。本研修は2022年までに44カ国から107名の修了生を輩出しています。
また、GEBCOの「海底地形名小委員会」では世界各国の専門家が集まり、世界の海底地形名を定めており、その成果は、IHO/IOC海底地形名集として世界中に周知されています。毎年開催されるこの海底地形名小委員会には海洋情報部職員も専門家として参加しており、日本に因んだ多くの海底地形名が採択されています。