南海トラフ巨大地震の想定震源域で捉えられた面的な海底の移動速度を用いて、プレート境界のすべり欠損分布を推定しました。 |
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海底地殻変動データを用いて推定されるすべり欠損分布 |
海底地殻変動データを用いずに推定されるすべり欠損分布 |
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海上保安庁は、南海トラフ巨大地震の想定震源域において、海底地殻変動観測を実施しています。平成18年から平成27年までの観測データから、南海トラフでの海底の移動速度が初めて面的に捉えられました。
これまで、国土地理院の電子基準点(GNSS連続観測点)の観測から南海トラフの大まかな固着の状態は予測されてきましたが、震源域の直上にあたる海底での観測が無かったため、詳細な議論が困難でした。
海底地殻変動観測の結果から測地学的インバージョンを行い、プレート間すべり欠損の分布を推定したところ、以下の3つのことが初めてわかりました。
※すべり欠損:プレート境界がずるずるとすべることなく、くっついた状態。この蓄積を調べることで固着状態がわかる。
・南海トラフの想定震源域内では、プレート境界のほぼ全域が固着を蓄積していること
・固着蓄積の分布には空間的に強弱があり、1940年代の地震の震源域よりも外側に固着の強い領域が広がっていること
・沈み込む海山の分布やゆっくり地震の活動域と固着の弱い領域が相関を持っていること
※ゆっくり地震:近年発見された、通常の地震よりもゆっくりと破壊が進む地震現象
この結果は、南海トラフ巨大地震を含めた世界中のプレート境界型地震を理解する上で極めて重要です。観測成果や推定結果を用いてさらなる調査・研究が進むことが期待されます。
また、今後も観測を続け、時間変化の有無についても監視していく必要があると考えています。解析の一部には、国土地理院の電子基準点データを使用しています。
※想定震源域の北側の外にすべり欠損が推定されているのはブロック運動を考慮していないために見かけ上生じた部分(いわゆるゴースト)です(説明資料:PDF)。
3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(M9.0)に伴い、震源のほぼ真上の宮城県沖の海底が東南東に約24メートル動いたことがわかりました。この移動量は、陸上で検出されていた最大移動量(牡鹿半島で約5.3m)の4倍以上に相当します。 |
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3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(M9.0)により、震源のほぼ真上に位置する宮城県沖の海底基準点が地震前と比べて東南東に約24m移動、約3m隆起したことがわかりました。陸域の観測結果に比べて、はるかに大きい地殻変動が捉えられたことはプレート境界型地震の発生メカニズムを理解する上で極めて重要なことです。
2011年以降も観測を継続しており、粘弾性緩和や余効すべりによる複雑な変動が観測されています。
※粘弾性緩和:水飴のように岩石が粘性を持つために、巨大地震の影響がマントル内に時間をかけてゆっくり伝わる現象
※余効すべり:巨大地震の影響でプレート境界がゆっくりとすべる現象
解析の一部には、国土地理院の電子基準点データを使用しています。