ESIについて
油濁事故発生により流出した油が海岸に漂着すると、その海岸は漂着油により、多かれ少なかれ物理的、 化学的又は生物的な影響を受けます。その影響の度合いや回復に要する時間は、海岸の形状や生息する生物 の多寡、更には海水の流れの良否により大きく左右されます。 その影響の度合いを数値化したものがESI(Environmental Sensitivity Index:環境脆弱性指標)です。 海上保安庁では、米国NOAAの分類方法を参考として、日本全国の海岸を10ランク18種類に分類するとともに、 地図上でESIのランクや海岸の種類が容易に判別できるよう、各ESI毎に色と線種を変えて表示しています。
なお、北海道沿岸域のESIは、平成15・16年に地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 環境・地質研究本部 地質研究所(旧 北海道立地質研究所)の協力を得て作成したものをベースとして、その後、海上保安庁の調査により海岸の形状の変化が確認された箇所については、その都度、変更を加えています。
ESIランクと海岸の種類
「ESIランク」クリックしていただくと、海岸の説明と写真が御覧いただけます。
ESI数値=1A 開放性海域の崖・急斜面(岩盤・粘土)
海岸の特徴
・勾配30度以上の急峻な斜面が直接水面に接しており、潮間帯は存在しないか、仮に存在してもその幅はとても狭い。
・侵食崖からの落下物は波で洗い流されるため、土砂等は存在せず、また、存在しても一時的である。
・潮間帯の生物群は、垂直面に帯状に分布する特徴を有する。
・生物の密度は大変高く、多様性に富んでいる。中でも、フジツボ、巻貝、イガイ、ヒトデ、カサガイ、イソギンチャク、イソガ二、ゴカイ及び大型褐藻類が優先種となっている場合が多い。
予想される油の挙動
・急峻な崖による反射波の影響を受け、油は海岸から離れた場所に留まる。
・露盤を覆った油は、速やかに洗い流される。
・油は高潮線よりも高い位置に最後まで残り、その形は斑点上の帯となる。
・潮間帯に生息する生物が受ける影響は短期的と考えられるが、精製された軽質油が一度に集中し押し寄せた場合は別である。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=1B 開放性海域の人工海岸(防波堤・人工護岸等)
海岸の特徴
・海岸は、防波堤、海岸突堤、埠頭、人工護岸、その他の硬質な人工構造物(例えば橋梁、桟橋等)で構成される。なお、低潮時に干出する潜堤(基質は6Bの潜堤以外のもの)はこの人工海岸に含む。一方、6Bの人工の捨て石状海岸(石積傾斜護岸、消波ブロックを含む)は、この人工海岸に該当しない。
・通常、干潮時でも底質は現れないが、多種多様な生物が生息している。
・これらの構造物は、波、航走波、流れによる侵食から海岸線を保護するためのものであり、早期の自然浄化にも役立つ。
・付着生物(動物、植物)の量は、低位又は中程度である。
予想される油の挙動
・開放された場所では、構造物による反射波の影響を受け、油は海岸から離れた場所に留まる。
・最後まで残る油は高潮線上又はそれよりも高い位置のものであり、斑点状の形のものが帯状に分布する。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
ESI数値=2 開放性海域の平坦な磯(岩盤・粘土)
海岸の特徴
・潮間帯は、多種多様な大きさの平らなベンチ状の岩から構成される。
・海岸の背後地は、急斜面若しくは低い崖になっている。
・急な斜面の基部は、砂から礫サイズの基質からなる浜辺が存在する。
・台状地の表面は凸凹で、通常、潮溜まりが形成されている。
・台状地の潮溜まりや隙間の中には、少量の礫が存在する。
・被覆性の動物や植物が非常に豊富で、潮溜まりには豊かな生態系が形成される。
予想される油の挙動
・油は台状地表面に付着せず、台状地を通過し高潮線に沿って集積する。
・浜辺に土砂等の堆積物が存在すれば、油はそこに浸透する。
・波陰に残った油や高潮線の底質に浸透した油を除き、通常、底質に浸透した油は短期間で消滅する。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=3A 開放性海域の砂浜(細粒~中粒)
海岸の特徴
・通常、浜辺は平らで、底質は固く締まっている。
・浜辺は、少量の貝殻が混じった、きめの細かい砂からできている。
・大量の漂着物が集積している場合が多い。
・浜辺は、鳥や亀の営巣地や餌場として利用される。
・通常浜辺の上部には動物は生息していないが、ハマトビムシだけは多く生息している。
一方、浜辺の下部には相当量の動物が生息しているが、その量は大きく変化する。
予想される油の挙動
・軽質油は、潮間帯上部に沿って、帯状に付着する。
・重質油は浜辺のほぼ全域を覆う。潮間帯の下部では、上潮時に重質油は浮上する。
・浜辺に土砂等の堆積物が存在すれば、油はその堆積物に浸透する。
・きめの細かい砂浜では、油は最大で10cmの深さまで浸透する。
・波打ち際では、油が流出して一週間以内に、油はきれいな砂の中に最大で深さ30cmまで埋没する。
・浜辺の底生生物は、油が底質の表面を覆ったり、地下の間隙水中に大量の油が染み出ることにより死んでしまう。
・底生動物が減少した場合は、そこを餌場としている貴重な水鳥にも影響が及ぶ。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=3B 開放性海域の急斜面(砂)
海岸の特徴
・このタイプの海岸は、急勾配な砂丘の底部が波や海流で掘削され崩落した場所で見られる。
・このような形状は、通常、浚渫土砂を盛土にした縁辺部や、切り立った川岸で見られる。 また、潮流が古い時代に形成された砂浜の稜線部を削り取った場所でも見ることができる。
・侵食が適度かつ断続的に行われているところでは、狭い浜辺のすぐ側まで急峻な崖が迫っている。
・斜面の頂上部に生えている樹木の根元は抉り取られ、その抉り取られた土砂等が斜面の基部に堆積している。
・鳥類や地中に生息する動物は少ない。
予想される油の挙動
・油は高潮線に集積し、その部分の底質が砂である場合は、油は土中に浸透する。
・斜面の基部に乾いた木片があれば、油はその表面に付着する。
・大規模な崩落が発生しない限り、油は土中に埋没しない。
・活発な斜面の侵食により、斜面に付着した油は取り除かれる。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=4 開放性海域の砂浜(粗粒)
海岸の特徴
・このタイプの海岸は、比較的勾配が急で、その底質は踏むと足が土中に沈み込む。
・粗い粒の砂浜は、1回の潮汐サイクルの中でさえ、速い速度で侵食と堆積を繰り返す。
・漂着物の量は、かなり変化に富んでいる。
・浜辺は、鳥や亀の営巣地や餌場として利用される。
予想される油の挙動
・軽質油は、潮間帯上部に沿って油が帯状に付着する。
・重質油は、浜辺のほぼ全体を覆う。油は、潮間帯の下部では、上潮時に浮上する。
・油は最大で深さ20cmまで浸透する。
・波打ち際では、油が流出して一週間以内に、油はきれいな砂の中に最大で深さ50cmまで埋没する。
・浜辺の底生生物は、油が底質の表面を覆ったり、間隙水中に大量の油が染み出ることにより死んでしまう。
・底生動物が減少した場合は、そこを餌場としている貴重な水鳥にも影響が及ぶ。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=5 開放性海域の砂礫混合浜
海岸の特徴
・この浜は、適度な傾斜を有し、砂と礫が混じり合って構成されている。
・異なる粒形の土砂が混じっているため、砂だけの区域、中礫だけの区域、大礫だけの区域が形成される。
・暴風時に堆積物が沖合に運ばれるため、季節によって堆積物の分布パターンが大きく変化する。
・開放された浜においては、底質は乾燥し移動するため、これに付着する生物(動物と植物)の密度は低い。
・付着性の藻類や動物が存在する場合は、その浜辺が比較的閉鎖された場所で、豊かな生物相を支えるのに適した安定した基質を有していることを示している。
予想される油の挙動
・流出量が少ない場合は、油は高潮線沿い又はその上部に滞留する。
・流出油が多い場合は、ほぼ潮間帯全体に広がる。
・油は最大で深さ50cmまで浸透する。しかしながら、砂の構成比率が大きく変動するため、仮に砂の比率が40%を超える場合は、砂浜と同じような性状を示す。
・油が残留しやすい場所、特に常時波に晒されていないような浜辺の高潮線上又はその上部では、油は地中へ深く埋没する。
・浜辺の中でも特に閉鎖的な場所では、重質油の大部分は地表面に存在する。このため、集積した重質油を取り除かないままでいると、地表面にアスファルト様の路面が出現する。
・アスファルト様の路面は、一旦形成されてしまうと、長年に亘って残る。
・浜辺の下部では、油は粗い粒子からなる底質中に残留する。中でも、劣化し乳化した油の場合は、その傾向が強い。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=6A 開放性海域の礫浜
海岸の特徴
・礫浜は、中礫から岩に至る様々なサイズの堆積物で構成されている。このうち、礫サイズの堆積物は貝殻の破片である。
・浜辺は急角度の斜面になっており、浜辺の上部には波の作用でできた幾つもの盛り上がりがある。
・通常、付着生物(動物と植物)は、底質の移動が少ない浜辺の下部で見られる。
・付着藻類、イガイ、フジツボの存在は、その浜辺が、豊かな生物相を育む安定した基質を有する、比較的閉鎖性の強い水域であることを示している。
予想される油の挙動
・開放性の浜辺において、残存した油は、地中へ速やかに埋没するか、地中に深く浸透する。
・開放性の浜辺では、油は高潮線やその上部の盛り土部分を超えて押し上げられ、通常では波が到達しないような上部に溜まったり残ったりする。
・油が長期間に亘り残留するか否かは、地中へ浸透する油の深さと、暴風時に波の影響が常に及ぶ地中の深さとの関係で決まる。
・浜辺の中でも特に閉鎖的な場所では、油が重度に集積した場合は、地表面にアスファルト様の路面が出現する。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=6B 開放性海域の捨て石状海岸(消波ブロック、石積傾斜護岸を含む)
海岸の特徴
基質が大礫・岩サイズの花崗岩等天然石からなる自然海岸、及び捨て石、石積傾斜護岸又は消波ブロック等の人工海岸(基質はコンクリート等の人工石又は自然石)が、これに該当する。なお、低潮時に干出する潜堤(基質はコンクリート等の人工石又は自然石)も上記の人工海岸に含む。
・この海岸は、花崗岩、石灰岩、コンクリートからなる大礫から岩サイズの石で構成される。
・この海岸構造物は、海岸の保全や水路の静穏を確保する目的で利用される。
・付着する生物相は貧弱である。
予想される油の挙動
・油は速やかにブロックの粗い表面に付着する。
・油はブロックとブロックの間隙に深く浸透する。
・除去できなかった油は、油が固化するまでの間は、常時、表面に染み出てくる。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=7 開放性海域の干潟
海岸の特徴
・この海岸は、広大な潮間帯を有し、多くの砂と少量の貝殻と泥で構成される。
・底質中に砂が優先する事実は、流れや強い波により底質が移動していることを示している。
・通常、この海岸の陸側に別の海岸が存在する。これらの海岸は、各々独立した浅瀬として存在するが、潮汐により出現する入り江で繋がっている。
・生物的利用は大変高い。大量の底生動物が生息し、鳥類の生息場所や餌場として頻繁に利用され、魚類の餌場にも利用されている。
予想される油の挙動
・通常、油は干潟の表面には付着せず、干潟を通り過ぎて高潮帯に集積する。
・大量の油が押し寄せた場合、干潟表面への油の堆積は引き潮時に発生する。
・油は水を十分に含んだ底質には浸透しない。
・生物、特に底生動物に対する被害は甚大になる場合がある。結果として、鳥類やその他の捕食動物の餌資源が減少する。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=8A 遮蔽性海域の磯と急斜面(捨て石等の人工海岸を含む)
海岸の特徴
・様々な傾斜の岩盤からなる海岸(垂直な崖から広い岩棚まであり、静穏な水域であるため波や潮汐による影響を受けにくい。)
・主要な基質は岩盤であるが、平坦な部分の表面には、多少の堆積物が存在する。
・生物の密度と種類は大きく変化するものの、生物相は非常に豊かである。
予想される油の挙動
・油は、速やかに粗い岩の表面に付着する。特に、高潮線に沿って明瞭な油の帯を形成する。
・広い岩棚の上であっても、低潮帯のように常時濡れている場所(特に藻類が繁茂している場合は)では、油は岩の表面に付着しにくい。
・劣化した重質油は、潮間帯の上部を覆うが、生物が豊富な潮間帯下部には影響はない。
・表層の堆積物が豊富な場所では、油は表層にある瓦礫の作用でできた岩の割れ目に浸透し、舗装面のような状態となって長期間残留する。
・瓦礫が溜まっている(固く締まっていない)ような場所では、油は深く浸透し、長期に亘り表面下の堆積物を汚染する。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導
・助言に従うこと
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ESI数値=8B 遮蔽性海域の人工海岸(防波堤・人工護岸等)
海岸の特徴
・この海岸は、防波堤、海岸突堤、埠頭、人工護岸、その他の硬質な人工構造物(例えば橋梁、桟橋等)で構成される。(8Aに該当する人工海岸は除く。)なお、低潮時に干出する潜堤(基質は8Aの潜堤以外のもの)はこの人工海岸に含む。
・これらの構造物のほとんどはコンクリート、材木、金属で作られているが、その構成比、形状、状態は大変変化に富んでいる。
・通常は、干潮時においても浜辺は現れないが、多様性に富んだ生物相が存在する。
・付着生物(動物、植物)の量は、中程度若しくは豊富である。
予想される油の挙動
・油は、速やかに粗い岩の表面に付着する。特に、高潮線に沿って明瞭な油の帯を形成する。
・低潮帯のように常時濡れている場所(特に藻類が繁茂している場合は)では、油は岩の表面に付着しにくい。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=9A 遮蔽性海域の干潟・砂浜・礫浜
海岸の特徴
・この海岸は、大部分の泥と少量の砂と貝殻で構成される。
・波浪の影響を受けないため静穏水域に特徴的な生物相が存在する。通常、その後背地には湿地がある。
・底質はとても柔らかく、多くの場所において、徒歩による通行は困難である。
・底質の表面は、まばらに、若しくは高い密度で藻類又は海草で覆われている。
・高潮帯には、多くの漂着物が集積している。
・底質の表層及び表層下には、膨大な量の貝類、ゴカイ、巻貝が生息している。
・これらの生物は、高い頻度で鳥や魚の餌として利用されている。
予想される油の挙動
・通常、油は干潟の表面には付着せず、干潟を通り過ぎて高潮帯に集積する。
・大量の油が押し寄せた場合、干潟表面への油の堆積は引き潮時に発生する。
・油は水を十分に含んだ底質には浸透しないが、生物の掘った穴や植物の根の空洞に浸透する。
・生物への被害は甚大である。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=9B 植生土手(河口部)
河岸の特徴
・この河岸は、草の生えた低い土手、若しくは侵食された低い土手(木が生え、木の根が水中に露出している)からなっている。
・土手は、高水時に頻繁に水に浸かる。
・このような河岸は、通常、淡水と汽水が接する場所に存在する。
予想される油の挙動
・低水時には、油は水面の高さにある基質に狭い帯状に付着する程度で、影響はほとんどない。
・高水時には、油は草や木の根元を覆い付着する。
・この場合、草は枯れてしまうが、木は、その内部に油が浸透し残留しなければ、枯れることはない。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=10A 草性湿地(汽水域)
湿地の特徴
・この湿地には約5ppt.以下の塩分濃度に耐えられる植物が生えている。
・湿地の幅は、狭隘なものから非常に広大な範囲のものまで千差万別である。
・底質は、砂が優占する孤立した島の周辺を除けば、有機物を豊富に含んだ泥で構成されている。
・湿地の開放部の前面は広い水面になっており、運河として利用され混雑している。
・閉鎖された区域は、大きな波や航走波に晒されない。
・数多くの種類の植物や動物が豊富に生息し、鳥類や魚類、そして貝類によって高度に利用されている。
予想される油の挙動
・油はまず、潮間帯の植物に付着する。
・油は潮間帯の植物に速やかに付着する。
・油膜が植生帯に浸入した時の水位により、油の帯状の付着痕の高さは様々である。このため、複数の(高さの)帯状の痕跡が残ることになる。
・油膜の規模が大きい場合は、複数回の潮汐サイクルが経過した後でも無くならず、高潮線帯から水底までの全ての部分に油が付着することになる。
・植物が密生している場合は、重質油の付着は湿地の外縁部に限定される。一方、軽質油は、そのような状態であっても、湿地の深部(潮汐の影響が及ぶ範囲)にまで侵入する。
・中質油又は重質油が、細かい粒度からなる底質に即座に付着又は浸透することはない。一方、油は、底質の表面に溜まったり、生物が掘った穴や植物の根の空洞に浸入する。
・軽質油は、通常は底質の表面から数センチの深さまで浸透するが、生物が掘った穴や泥の亀裂がある場合は、さらに深部(1mまで)まで浸透する。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=10B 草性湿地(淡水域)
湿地の特徴
・この湿地は、淡水性植物により構成される草性湿地である。
・主要な水路に沿った部分は強い流れと航走波に晒されるが、内陸部は極めて静穏である。
・底質は、一日の水位の変化が大きくないことから、安定している。底質の大きな変化は、洪水期に発生する。
・数多くの種類の植物や動物が豊富に生息し、高度に利用されている。
予想される油の挙動
・油は潮間帯の植物に速やかに付着する。
・油膜が植生帯に浸入した時の水位により、油の帯状の付着痕の高さは様々である。水位の変化により、複数の(高さの)帯状の痕跡が残ることになる。
・植物が密生している場合は、重質油の付着は湿地の外縁部に限定される。一方、軽質油は、そのような状態であっても、湿地の深部(洪水期の最高水位にまで侵入する。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=10C 草木性湿地(淡水域)
湿地の特徴
この湿地は灌木と広葉樹から構成されており、定期的に洪水に見舞われる。
・この湿地は、広大な氾濫原として、河川沿いに普通に見られる。
・底質は、大量の有機物を含んだきめの細かい粘土である場合が多い。
・土地が低く周年を通じて氾濫原となっている場所が多いものの、洪水は特定の季節に発生する。
・数多くの種類の植物や動物が豊富に生息している。
予想される油の挙動
・油の挙動は、湿地が洪水期にあるか否かによって異なる。
・洪水期においては、油は、森を通過し、平時の水位より高いところに存在する植物に付着する。なお、水位は洪水期を通じて変化する。
・油に汚染された樹木への影響は、草性湿地に対するものほど大きくない。
・水位が低下すると、油の一部は氾濫原に捕捉され残留する。また、油の付着した漂流物等が大量に残る。
・底質の含水率が高いこと、底質が泥状であること、有機物の残骸が底質の表面を覆っていること、及び植物が繁茂していることなどから、通常、氾濫原の底質への油の浸透は限定される。
・乾期においては、陸地に残った油は、低いところを流れて窪地に溜まるか、河川本体に流れ込む
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。
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ESI数値=10D マングローブ
湿地の特徴
・植物の根と幹は潮間帯に存在し、高潮時に一番下の葉のみが水に浸る。
・森の広さは、木1本のものから数キロに及ぶものまで様々である。
・底質は砂、泥、腐葉土、若しくは泥炭であり、これらが岩盤の上を覆っている場合が多い。
・大量の漂着物が集まっている。
・高い生産力を有し、生物の保育地にもなっており、大変多様性に富んだ多くの種類の動物や植物を養っている。
予想される油の挙動
・高潮時に油が押し寄せると、マングローブ全体が油に洗われる。
・盛り上がった箇所や海岸線がある場所では、油はその周辺の集まり、盛り上がった場所の底質又は漂着物やゴミの中に浸透する。
・乳化した重質油は、マングローブの支根の茂みに捕捉される。
・油は速やかに支根、木の幹、呼吸根に付着する。
・付着した油の浮上と浮遊によって発生する二次汚染は、長期間に亘りマングローブに負の影響を与える。
・特に重質油が木に付着した場合は、油が付着してから数週間後に悪影響の兆候(葉っぱが黄変する。)が現れ、数ヵ月後には枯れてしまう場合もある。
油流出事故対応時の留意事項
・油の漂着現場は、予想外の危険が存在するので、むやみに立ち入らないこと。
・汚染除去作業を実施する場合は、現地対策本部及び現場指揮者等の指導・助言に従うこと。