海洋情報部トップ > 海洋情報部の取り組み > 海の研究 > 過去の主な研究

過去の主な研究


九州南方沖の古島弧:九州・パラオ海嶺の地震波速度構造

九州・パラオ海嶺における地震波速度構造探査測線の位置
図1.九州南東部からパラオまで延びる長大な海底山脈:九州・パラオ海嶺における地震波速度構造探査測線の位置.

九州・パラオ海嶺は,フィリピン海プレートの中央部に南北におよそ2,600 kmにわたって延びる地形の高まりです. この高まりは,古伊豆・小笠原・マリアナ島弧が割れて四国海盆とパレスベラ海盆が 背弧拡大によって形成された時の古島弧の西側部分であると考えられています. 九州・パラオ海嶺の地殻構造が,現在の伊豆・小笠原・マリアナ島弧の構造と比較すると, どのように異なるのかを調べるために人工地震波を使った速度構造探査を行いました.


九州・パラオ海嶺のP波(縦波)速度構造断面図
図2.九州・パラオ海嶺のP波(縦波)速度構造断面図.

それぞれの測線で得られた速度構造断面図から以下の特徴が読み取れます.

  • 九州・パラオ海嶺下の速度構造は,海嶺軸に沿って北から南へと大きく変化しますが, 共通して,海嶺の東側の四国海盆・パレスベラ海盆や西側の西フィリピン海盆の海洋地殻よりも, 海嶺の高まりの下では厚い島弧地殻を持ちます.この厚い地殻の速度構成は, 古伊豆・小笠原・マリアナ島弧とよく似ており,もともと一つの島弧であったことを裏付けます.
  • 九州・パラオ海嶺の東端部は,海洋地殻よりもさらに薄い地殻と高速の最上部マントル速度によって特徴づけられます. これは,九州・パラオ海嶺が古伊豆・小笠原・マリアナ島弧から引き伸ばされて分離した時の構造を表しているのではないかと推定しています.
  • 九州・パラオ海嶺の西端部は,測線によって様々な特徴を示しますが, これは海嶺の西側領域がぞれぞれが異なる成因で形成されたことを反映していると考えています.

参考文献:Nishizawa et al. Earth, Planets and Space 2016, 68:30

▲目次に戻る

九州南方海域における大東海嶺群の地震波速度構造

九州南方の海底地形を特徴付ける沖大東海嶺群


九州の南方の海域には,大東海嶺群と呼ばれるいくつかの海底の高まりが分布する場所があります. その中でも大きな地形は,右の拡大図に示しますように,北から奄美海台,大東海嶺,沖大東海嶺(広義)で, 東西から北西ー南東の走向を持つ細長い高まりを形成しています. 海上保安庁では,これらの地形の高まりの地下がどのようになっているかを調べるために,地震波を使って速度構造の調査をしました.
沖大東海嶺群のP波速度構造断面図

右図の黒太線の3測線について左図にそれぞれの断面図を示しました.奄美海台,大東海嶺および沖大東海嶺の地震波速度構造は,一様ではなく, 水平方向に大きく変化しています.それでも,ほぼ共通の性質として,P波速度が6.3-6.8 km/sの中部地殻(黄緑色の領域)を持ち, 最上部マントル速度が7.6-7.8 km/sで,地殻の厚さは15-25 kmであることがあげられます.海洋底拡大で生じた標準的な海洋地殻は中部地殻を持たず, 最上部マントルの速度はおよそ8 km/s,地殻の厚さは7 km 程度ですから,これらの大東海嶺群の高まり下の構造は海洋地殻とは大きく異なります. むしろ,日本列島や伊豆・小笠原島弧の構造に類似しています.大東海嶺群の海底から採取された多くの岩石は島弧的な性質を持つことが知られていましたが, 今回の調査により,海底下も島弧的な構造をしていることがわかりました.南西諸島海溝北東端部には, 海洋地殻よりも有意に厚い島弧の地殻を有する奄美海台が沈み込もうとしています.


参考文献:Nishizawa et al. Earth, Planets and Space 2014, 66:25

▲目次に戻る


このページのお問い合わせは海洋研究室までお願いいたします。
メール: kenkyu*jodc.go.jp (*を@に変えてください)