国家的ニーズに技術で応える
H8入庁(20年目)
海洋調査課* 海洋防災調査室長
理学部(専攻:物理学)
採用区分:物理
「こんな役所に入ったつもりじゃなかった。」最近こんなことを良く周りにお話しします。
大学での専門とは全く畑違いの職場を選んだのは、科学の素養を役立てることができると感じたこと、先輩達が目を輝かせて生き生きと仕事をされ、それを楽しそうに語ってくれたこと、
そして何より、技術面では海洋学・地質学から宇宙技術まで、測量船はもちろん、離島から南極・深海までが現場という、仕事の幅広さに魅力を感じたからでした。
そして、入庁から20年目を迎えた今、当時のイメージは良い意味で裏切られたと感じています。
これまで、研究や技術開発も含め様々な業務に関わりましたが、やはり大きいのは、我が国の大陸棚延長申請に深く携わったことです。
「海の憲法」とも言われる国連海洋法条約で「大陸棚」は海底資源の管轄海域と位置づけられ、科学的データに基づいて国連に申請し認められれば、その範囲を広げることができます。
詳細な科学調査を行い国連に申請する仕事は「国家百年の計」とばかりに、政府の一大プロジェクトになりましたが、その中で私は、内閣官房への出向や申請書作成チームへの参加を通じて、関係省庁の政策調整や、外交協議、立法府への説明といったことから、
詳細なデータに基づいて科学的に緻密な分析を行い、申請資料を作成するといったことまで、あらゆる側面に関わることができました。
思い返せば、私が入庁した平成8年は、我が国が国連海洋法条約を批准した年でした。
それ以来、この新たな枠組みの下、我が国周辺の海洋を巡る状況は大きく変化しています。
大陸棚調査のみならず、国の管轄海域の基礎となり、海洋開発の基盤となる海洋情報の重要性は増すばかりで、この20年間で、海洋情報部の仕事は大きく飛躍しました。
当初感じた魅力はそのままに、今やそのやりがいは、入庁したころの想像を遙かに超えています。
我が国の周りの海は、まだまだ未知の領域だらけです。海洋調査の技術は日々進歩し、調査を進める度に思いもよらなかった姿を見せてくれます。海洋政策の面でも我が国は端緒についたばかり。皆さんが存分に活躍できる場が海上保安庁で待っています!
※本記事はH27年度時点のものです。