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海洋情報部

海の研究


○海洋情報部では,我が国の産業や国民生活を支える海上交通の安全確保,海洋に起因する災害への対応,海洋環境の保全,海洋権益の保全,さらには海洋情報の円滑な流通を図るため,最先端の調査・研究を行っています.

○その成果を分かりやすくご紹介するため,毎年「研究成果発表会」を開催しています.

 ●平成28年3月7日(月)に平成27年度 海洋情報部研究成果発表会を開催しました.
「空間情報技術と高密度海洋データ」をメインテーマとして,小口高教授(東京大学空間情報科学研究センター長)から,地形研究・環境研究の基礎としての測量と地形データに関する基調講演を頂いたのち,当庁が実施した最新の調査・研究成果を紹介致しています.

 ●これまでに開催した研究成果発表会の予稿集は以下でご覧になれます.

○研究成果は海上保安庁研究成果報告書,海洋情報部研究報告により公表されています.

○水路業務研究費による研究については,当庁職員以外の有識者による海洋情報部研究評価委員会を設置し,公正かつ透明性の高い評価を実施しており,評価結果は公開されています.

○海洋情報部における,研究活動上の不正行為への対応について.




 主な研究トピックは以下のとおりです.



九州南方海域における大東海嶺群の地震波速度構造

九州南方の海底地形を特徴付ける沖大東海嶺群
九州の南方の海域には,大東海嶺群と呼ばれるいくつかの海底の高まりが分布する場所があります. その中でも大きな地形は,右の拡大図に示しますように,北から奄美海台,大東海嶺,沖大東海嶺(広義)で, 東西から北西ー南東の走向を持つ細長い高まりを形成しています. 海上保安庁では,これらの地形の高まりの地下がどのようになっているかを調べるために,地震波を使って速度構造の調査をしました.

沖大東海嶺群のP波速度構造断面図
右図の黒太線の3測線について左図にそれぞれの断面図を示しました.奄美海台,大東海嶺および沖大東海嶺の地震波速度構造は,一様ではなく, 水平方向に大きく変化しています.それでも,ほぼ共通の性質として,P波速度が6.3-6.8 km/sの中部地殻(黄緑色の領域)を持ち, 最上部マントル速度が7.6-7.8 km/sで,地殻の厚さは15-25 kmであることがあげられます.海洋底拡大で生じた標準的な海洋地殻は中部地殻を持たず, 最上部マントルの速度はおよそ8 km/s,地殻の厚さは7 km 程度ですから,これらの大東海嶺群の高まり下の構造は海洋地殻とは大きく異なります. むしろ,日本列島や伊豆・小笠原島弧の構造に類似しています.大東海嶺群の海底から採取された多くの岩石は島弧的な性質を持つことが知られていましたが, 今回の調査により,海底下も島弧的な構造をしていることがわかりました.南西諸島海溝北東端部には, 海洋地殻よりも有意に厚い島弧の地殻を有する奄美海台が沈み込もうとしています.

参考文献:Nishizawa et al. Earth, Planets and Space 2014, 66:25

フィリピン海リソスフェアの理解に向けての窓:ゴジラメガムリオン

フィリピン海
1983年から2008年に掛けて実施された日本政府の大陸棚画定調査によって,フィリピン海の地質学的・地球物理学的な詳しい理解が進展しました. このうち,大陸棚画定調査で発見された顕著な地形として,パレスベラ海盆(Parece Vela Basin)に発達するゴジラメガムリオン (Godzilla Megamullion)があります(Ohara et al., 2001; Ohara, 2015).
ゴジラメガムリオンは,世界最大の海洋コアコンプレックスであると考えられています.海洋コアコンプレックスとは, 海底拡大系において低角の正断層が発達し,その断層運動に伴って海底面に下部地殻や上部マントル物質が露出している ドーム状の地形的高まりの構造のことで,海洋リソスフェアの組成・構造の理解を助ける優れた場となっています(Escartin & Canales, 2011).

ゴジラメガムリオン
パレスベラ海盆の拡大方向は,北東?南西方向であり,海盆の海底の多くは,海底拡大で形作られた, 海底拡大方向に直交する地形的ファブリックで特徴づけられています.しかし,ゴジラメガムリオンでは, 海底拡大方向に平行する地形的ファブリックで特徴づけられており,特異な存在となっています (Ohara et al., 2001, 2011; Spencer & Ohara, 2014).
ゴジラメガムリオンは125 km × 55 kmという東京都面積の約3倍という広さを有しています(点線の範囲). そのほぼ全面に下部地殻物質や上部マントル物質が露出していることが明らかとなり, その物質科学的研究はフィリピン海リソスフェアの組成・構造に関する重要な手がかりを与えています (Harigane et al., 2008, 2010, 2011a, b; Loocke et al., 2013; Ohara et al., 2003; Sanfilippo et al., 2013; Michibayashi et al., 2014; Tani et al., 2011).
今後は,ゴジラメガムリオンがこれほどまでに巨大に発達した要因を明らかにするための研究を実施していきます.

参考文献:
Escartin, J. & Canales, J.P. (2011) EOS Transactions, AGU, 92, doi:10.1029/2011EO040003.
Harigane, Y., et al. (2008) Tectonophysics, 457, 183-196.
Harigane, Y. et al. (2010) Island Arc, 19, 718-730.
Harigane, Y. et al. (2011a) Lithos, 124, 185-199.
Harigane, Y. et al. (2011b) Island Arc, 20, 174-187.
Loocke, M. et al. (2013) Lithos, 182-183, 1-10.
Ohara, Y. et al. (2001) Marine Geophysical Researches, 22, 47-61.
Ohara, Y. et al. (2003) Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 4 (7), 8611, 10.1029/2002GC000469.
Ohara, Y., et al. (2011) Modern Approaches in Solid Earth Sciences, Springer, 8, doi: 10.1007/978-90-481-8885-7_7.
Ohara, Y. (2015) Island Arc, in press.
Sanfilippo, A. et al. (2013) Journal of Petrology, 54, 861-885.
Michibayashi, K., et al. (2014) Earth Planetary Science Letters, 408, 16-23.
Spencer, J.E. & Ohara, Y. (2014) Tectonics, 33, 1028-1038.
Tani, K., (2011) Geology, 39, 47-50.

衛星画像を用いた浅海水深情報の把握

衛星画像から水深を調べる
光学センサを搭載した人工衛星の画像を用いて,浅い海域の水深を推定する技術と海洋情報業務への適用について研究を行っています. これは太陽光が水中で減衰する性質を用いて水深を推定する方法で,衛星画像推定水深(SDB:Satellite Derived Bathymetry)と呼ばれています.
測量船が入れないごく浅い海域において特に効率よく水深を把握することができ,短時間で調査が済むことが特徴です.

石垣島沖における試験解析
2013年4月29日に光学衛星WorldView-2が撮影した石垣島周辺の画像を利用して,水深の推定を行った例です. コースタルブルー,青,緑,黄,赤の5色の波長帯の画像を用いて解析をしたもので,水深0〜15mの範囲で水深が求められています.
水平解像度は1.8mであり,このように衛星画像の範囲で面的に広く水深が把握できることから,  海図作成や災害時の障害物調査,津波予測のための海底地形データの作成等に活用が期待されます.

参考文献:
松本, 平成26年度海洋情報部研究成果発表会予稿集 7.
(一財)日本水路協会, 2014年度衛星画像を用いた浅海水深情報の把握の調査研究(報告書)

本研究は(公財)日本財団の助成により(一財)日本水路協会が実施する「衛星画像を用いた浅海水深情報の把握の調査研究」の一環として, 海洋情報部と(一財)日本水路協会の共同研究協定に基づき実施しています.