海の深さを測るという仕事
H20入庁(8年目)
海洋調査課 大陸棚調査室*
理学部(専攻:気象学)
採用区分:理工Ⅲ
私は自律型潜水調査機器(AUV)という海中ロボット(!?)を運用する仕事をしています。
この原稿を書いている翌日から1ヶ月間の海洋調査に行きます。
日本周辺の深い海に海中ロボットを潜らせて、海底の火山を調査して、これまで誰も見つけていない熱水活動の存在を明らかにしたいと思います。
調査でどんな発見があるのだろうか?という期待が50%、機械がうまく動くだろうか?という不安が50%の複雑な思いで原稿を書いています。
「国家公務員総合職」というと、霞ヶ関で机に座って法律や予算とにらめっこというイメージがあると思いますが、こういう仕事もあります。
海上保安庁海洋情報部は伝統的に「海の深さを正確に測る」という仕事をしてきました。
海の深さを正確に測り、浅瀬があれば、航海者に知らせることで、海上交通の安全を確保して、日本の海上貿易を支えてきました。
近年では「海の深さ」は、航海安全だけでなく、大陸棚の限界画定という日本の新たな国土を決める国家プロジェクトにおいて、
最も重要な科学的資料として国連に提出されるなど、海洋権益の確保のために利用されています。
そして、現在、私が担当している仕事では、新たなテクノロジーである海中ロボットを用いて、海の深さを超精密に測ることで、海底の地形を明らかにして、海洋資源開発等に役立っています。
昨年は、久米島沖の国内最大規模の海底熱水鉱床の発見に貢献することができました。
調査を行うたびに新たな発見があり、「こんなに面白い仕事は他にない」と心の底から思っています。
もちろん入庁して8年の間には、辛い仕事、楽しくない仕事もたくさんあり、辞めようと何度も思いましたが、上司のおかげもあり、今の仕事に巡りあえて本当に幸せだと思っています。
私は大学・大学院と気象学を専攻していて、海洋情報部が行っている仕事と専門は違いました。
就職を決めた理由は「雰囲気が良かったから」「海外とつながりのある仕事をしているから」といった曖昧な理由であり、「この仕事がしたい!」と情熱を持って入庁したわけではありませんでした。
ですから、この文章を読んでいらっしゃる皆さんに「やりたいことを探して下さい」など偉そうなことは言えません。
一つ伝えたいことは、「会社や役所には皆さんが知らないようなマイナーだけど面白い仕事がたくさんある」ということです。
専門が近い皆さんも、全く違う皆さんも、この文章を読んで、海上保安庁海洋情報部の仕事に少しでも興味を持たれた方は、是非一度、説明会に来て、職員に会って、話を聞いて、質問して下さい。
皆さんの知識・経験・考え方を役立てる仕事が必ずあります。
何かを学び続けられる前向きな姿勢があれば大丈夫です。海の分野は、陸や宇宙に比べれば、変化や発展が遅く、地味で華やかではありませんが、限りなく大きな可能性を秘めています。
日本の海の可能性を切り開いて下さる皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。
※本記事はH27年度時点のものです。